研究実績の概要 |
本研究は、(1)DNAなど特定要素(群)を用いて初期胚内に人工核を創出する再構成技術、(2)受精卵において特異的な領域にエピゲノム編集を行う技術を開発し、それらと(3)超解像イメージングなどの計測技術を組み合わせることで、初期胚核が機能性を獲得していく機序を理解することを目的とする。 (1)人工核の創出:当該年度は、導入する要素を検討した結果、長鎖DNA(約166 kbp)を発生開始直後の卵子に導入することで、核移行活性を持つ人工核の作製に成功した。この人工核は核小体様構造を有しており、明視野レベルでは天然核と酷似していた(Yonezawa et al., in prep)。体細胞で人工核を創出する目的で、培養細胞にプラスミドDNAを導入したところ、DNA塊周辺には核膜孔のない“牢屋”核膜が形成され、その疑似核は転写不活性であった(Haraguchi et al., Commun Biol, 2022)。 (2)エピゲノム編集:卵子において染色体セントロメア領域のminor satellite配列に人為的にDNAメチル化を導入した場合、第1および第2減数分裂には影響はないが、受精後4細胞期付近で発生が顕著に停止し、特にG2期が遅延・停止していることがわかった(Yamazaki et al., in prep)。 (3)クロマチン計測:当該年度報告した低侵襲性の超解像ライブセルイメージング(Hatano et al., Genes to Cells, 2022)を用いて転写におけるRNA polymerase IIのリン酸化状況を生きたまま観察することに成功した。また、この技術を応用し、培養環境の変化が分裂速度に与える影響の定量化を行い、現在論文投稿中である(Mashiko et al., under revision; Yao et al., submitted)。
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