研究実績の概要 |
本研究は、(1)DNAやヒストンなど特定要素(群)を用いてマウス初期胚内に人工核を創出する再構成技術、(2)生きたままの受精卵において特異的な領域に適時にエピゲノム編集を行う技術を開発し、それらと(3)超解像イメージングなどのクロマチン計測技術を組み合わせることで、初期胚核が機能性を獲得していく機序を理解することを目的とした。 (1)人工核の創出については、長鎖DNA(約160 kbp)を受精直後の卵子に注入することで、これまで不可能であった核移行活性を持つ人工核の作製に成功した。この人工核は核膜や核膜孔に加えて核小体を有しており、驚いたことに、核内においてヘテロクロマチン様構造を形成していた。以上から、マウス受精卵の核や核内構造の一部はDNAのみで形成され、それは塩基配列に依存しないことが明らかとなった(Yonezawa et al., in prep)。 (2)これまでに確立したエピゲノム編集法を用いて、受精卵のセントロメアMinor satellite配列特異的にDNAメチル化を導入すると、その転写活性に影響を与えずに4細胞期の G2期が遅延・停止していた。すなわち、初期胚では体細胞とは異なり、低DNAメチル化セントロメア領域を基盤にした初期胚特異的な細胞周期の制御メカニズムが存在すると考えられた(Yamazaki et al., in prep)。 (3)昨年度報告した低侵襲性の超解像ライブセルイメージングを用いて、(1)の人工核や、(2)で作製したDNAメチル化導入胚のセントロメア領域の観察を進めた。また、これまでに構築した染色体動態のライブイメージングを応用し、卵割時の染色体不安定性に関する論文を発表した(Mashiko et al., 2023; Yao et al., 2023)。
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