研究領域 | 遺伝子制御の基盤となるクロマチンポテンシャル |
研究課題/領域番号 |
18H05529
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
木村 暁 国立遺伝学研究所, 遺伝メカニズム研究系, 教授 (10365447)
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研究分担者 |
坂上 貴洋 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (30512959)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞核 / クロマチン構造 / ポリマー物理学 / 線虫 / 発生 |
研究実績の概要 |
本研究では、クロマチン構造を変化させ遺伝子発現を制御するものとして、細胞核のサイズやクロマチンの動きやすさ等の物理的要因に着目して、そのメカニズムと役割を理解することを目的としている。 2018年度は、クロマチンが線虫胚細胞の核内で動く様子を可視化・定量化するためのイメージング実験系を確立した。二光子励起型のスピニングティスク共焦点顕微鏡を用いることによって、生細胞内でのクロマチンの運動を、褪色と細胞毒性を抑えて、高速で3次元的に取得することに成功した。この定量的データを、種々の理論モデルに基づいたポリマーの挙動と比較し、クロマチン構造の持つ物理学的な特徴を明らかにする解析を進めている。 また、細胞核のサイズを遺伝学的に変化させた際の、クロマチン運動を定量化し、細胞核サイズが運動に及ぼす影響を定量的に評価することも進めている。 さらには、クロマチン構造にかかる物理的な力を明らかにするために、核内の力測定にも取り組んでいる。2018年度は、線虫胚に直接物質を導入する手法を確立することに成功した。これにより、核内に磁性ビーズなどを導入し、力を測定・制御する目的に向かって前進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画において2018年度の最大の課題と位置付けていた「低褪色、低細胞毒性での高速3次元イメージング」の実験系を確立できたから。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、前年度に確立したイメージングシステムを用いて、クロマチンの運動を種々の条件で計測し、物理的な特徴を見出す。それを元に、物理モデルの構築を開始する。また、核内の力を測定・制御する実験系の確立を目指す。具体的には、磁気ビーズを細胞核内に導入して、磁気ピンセットによって任意の大きさの力をかけることに取り組む。そして2020年度以降に、クロマチン構造変化や転写変動の計測により、クロマチン濃度の変化が遺伝子発現に与える影響を評価する。また、クロマチン運動については、作用する力と粘弾性といった物理パラメータを計測する方法を確立し、さらには、転写変動等との関係を解析する。これらの解析を通じて「クロマチン濃度」と「クロマチン運動」が転写に与える影響を説明する理論モデルを構築し、転写制御を司るクロマチンポテンシャルに影響する物理的要因とそのメカニズムを理解することを目指す。
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