研究領域 | 遺伝子制御の基盤となるクロマチンポテンシャル |
研究課題/領域番号 |
18H05530
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
眞貝 洋一 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (20211972)
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研究分担者 |
平谷 伊智朗 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (40583753)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | クロマチンリモデリング / クロマチンドメイン / 核内コンパートメント |
研究実績の概要 |
2021年度は、以下の研究を進めた。 眞貝は、1)クロマチンリモデリング因子によって如何に転写抑制のエピゲノムが動的に制御されているかを明らかにすることを目指している。また、2)H3K9メチル化並びにその修飾酵素がどれほどクロマチン3次元構造、特にヘテロクロマチンの形成に重要であるのか、どのような役割を持っているのか、明らかにすることも目標にしている。今年度、1)クロマチンリモデリング因子複合体HELLS/CDCA7の分子機能の一端を明らかにした。2)H3K9メチル化を完全に消失させた不死化MEF細胞を樹立し、HiC-seq、ChIP-seq、光顕、電顕等による3Dクロマチン構造の解析を行った。その結果、H3K9me3ヘテロクロマチンは複数のエピゲノム制御系により冗長的に3D構造・機能が制御されていることを明らかにした。 平谷は、Mb単位のクロマチン構造である核内コンパートメントと高い相関を示す複製タイミングの異常を示す変異体を網羅的に同定して解析することで、核内コンパートメントの分子基盤の解明を目指している。前年度までにマウス8番染色体Rex1領域の複製タイミング異常の再現性を確認した候補因子、特にDNA複製関連因子について、今年度はオーキシンデグロン(AID)法を適用し、オーキシン依存的な標的タンパク質分解除去を実現した。このAID法とHi-C解析を組み合わせ、分解除去によって核内コンパートメント形成に異常を示す候補因子を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
眞貝の担当である「クロマチンリモデリング因子によって如何に転写抑制のエピゲノムがダイナミックに制御されているか」を明らかにする研究では、クロマチンリモデリングHELLS複合体の構成因子HELLS,CDCA7とde novo DNAメチル化酵素DNMT3A, 3Bのリコンビナントたんぱく質の全長WT及び欠失変異体をいくつも用意し、生化学的解析から、HELLSとCDCA7の機能的関係において、興味深い知見を複数得ている。さらに、領域内の共同研究により、クライオ電顕やAMF解析でも興味深いプレリミナリーな知見を得ている。また、H3K9メチル化を完全に消失させた不死化MEF細胞のクロマチン3D構造の解析から、ヘテロクロマチンは冗長的なエピジェネティック制御のコントロール下にあることを見出し、この知見を論文化するべく、準備を進めている。 平谷の担当である「Mb単位のクロマチン構造の一つとして近年見出された核内コンパートメントについて、その制御因子の網羅的探索を行い、核内コンパートメントの分子基盤を明らかにする」研究については、候補因子を得て、その候補タンパク質を分解除去すると、核内コンパートメント形成に異常が出ることを見出した。予想以上に研究が進展しており、この候補因子の作用の詳細をさらに明らかにして論文にまとめたい。
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今後の研究の推進方策 |
(1-1)引き続き、昆虫細胞で産生したクロマチンリモデリング因子複合体・HELLS/CDCA7、DNAメチル化酵素Dnmt3a, 3b, 3Lを用いて、in vitro DNAメチル化におけるHELLS/CDCA7の役割をヌクレオソームを基質として生化学的に検討し、これまでの研究成果の論文化を目指す(眞貝)。 (1-3)引き続き、HELLS/CDCA7の機能を推察するため、DNAあるいはヌクレオソームと会合させた状態のHELLS/CDCA7複合体の構造学的解析(クライオ電顕解析)並びに1分子動態観察(AFM解析)を進め、その研究成果の論文化を目指す(眞貝)。 (1-4)A/Bコンパートメント形成におけるH3K9メチル化の役割を明らかにするため進めて来たH3K9メチル化完全消失iMEF細胞の解析結果の論文化を目指す(眞貝/平谷)。 (2-2)マウスES細胞を用いて、8番染色体Rex1領域の複製タイミング異常を示す変異体の網羅的スクリーニングを行ったところ、多数のDNA複製関連因子がヒットした。現在までに、これらの候補因子がDNA複製のみならず、ゲノム三次元構造制御にも関与することを示唆するデータを得ている。今年度も引き続き、標的タンパク質分解誘導系による遺伝子阻害実験を用いて、これらの候補因子の機能を明らかにしていく。特に、細胞周期の様々な時期における候補因子の機能を詳しく解析し、DNA複製における役割とゲノム三次元構造制御における役割の関係をRepli-seq法およびHi-C法を駆使して明らかにし、論文にまとめる(平谷)。 (2-3)2-2の計画を進めつつ、引き続き、少数細胞に適したHi-Cプロトコールの確立を進める(平谷)。
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