計画研究
真核生物の細胞核内には、生体膜に囲まれない構造体であるRNAボディが多数存在する。これらは、ノンコーディングRNAとタンパク質複合体が凝集して形成されたもので、核内の局所に転写に関連する因子を濃集させる。RNAボディは、近隣クロマチンの転写の起こりやすさに対するクロマチンポテンシャルを理解する鍵と考えられる。本研究では、真核生物に普遍的に存在し、かつ核内最大のRNAボディである核小体と、ER陽性乳がんに特異的なエレノアクラウドに着目している。これらの形成機序、転写制御機能、物性、細胞分化や疾患における役割の解析を行い、核内RNAボディによるクロマチン制御機構を解明することを目的としている。本年度は主に、エレノアRNAから構成されるエレノアクラウドの生体内の意義の解明に努めた。臨床検体を用いた解析により、エレノアの発現はERを発現するER陽性乳がん症例に限定され、かつERの発現度合いに相関をみとめた。これは、今細胞株を用いた研究から得られた、「エレノアはERをコードするESR1遺伝子の転写を活性化する」という結果とよく一致するものであった。興味深いことに、原発巣でエレノアを発現するケースは、晩期再発(術後5年以上経って再発)の頻度が高いことがわかった。さらにERの発現と乳がん幹細胞マーカーであるCD44の発現に相関がみとめられ、細胞核内でCD44とエレノアが頻繁に共局在することを見出し、CD44の転写活性にエレノアが必要であることを明らかにした。エレノアは乳がん幹細胞維持を介して、がんの長期休眠に貢献し、それが晩期再発につながることを見出した。基礎研究と臨床をつなぐ新たな知見が得られた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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