研究実績の概要 |
分裂酵母をモデルとして、クロマチンポテンシャルに影響を与えるものとして、(1)核膜との相互作用、(2)非コードRNAとの相互作用、(3)ヒストン修飾について解析を行った。 (1)核膜との相互作用、:Lem2とBqt4の二重欠損株は致死となるが、この株では核タンパク質が核外に漏出し、この漏出が致死の原因であることを明らかにし、Lem2とBqt4が核膜のバリア機能の維持に重要であることを明らかにした。また、この致死性を相補するものとして、分裂酵母の核膜に局在するElo2タンパク質を発見した。分裂酵母においてElo2を欠損すると致死となるが、この致死性をヒトElo2ホモログが相補することから、Elo2の機能が種を越えて保存されていることを示した (Kinuagsa et al, J Cell Sci 2019)。 (2)非コードRNAとの相互作用、:これまで報告していたsme2 RNAに加え、クロマチンに蓄積する新たな非コードRNAおよびRNA結合タンパク質を同定した(Ding et al, Nat Commun 2019)。また、数理物理学との分野融合によりコンピュータシミュレーションを行い、相同染色体対合過程の数理モデルを構築した(Takao et al, J Phys Soc Jap 2019)。 (3)ヒストン修飾:分裂酵母の2つのヒストンH2A遺伝子の1つを欠損すると、染色体末端のリボソームRNAリピート配列が絡まって、染色体分離異常を起こすことを明らかにした(Yamamoto et al, Sci Rep 2019)。また、ヒストンH2Aのユビキチン化がヒストンシャペロンとの相互作用を介してクロマチン上へのヒストンローディングを制御することがわかった(Murawska et al, Mol Cell 2019)。
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