研究実績の概要 |
分裂酵母をモデルとして、クロマチンポテンシャルに影響を与えるものとして、(1)核膜との相互作用、(2)非コードRNAとの相互作用、(3)ヒストン修飾について解析を行った。 (1)核膜との相互作用:分裂酵母の核膜タンパク質Lem2の欠損と合成致死になるものとして、別の核膜タンパク質Bqt4を同定していたが、このBqt4タンパク質はBqt3タンパク質が欠損すると分解されることを明らかにした(Toanら、日本分子生物学会)。また、Lem2とBqt4の二重欠損の合成致死を相補する因子として、新たにセラミド合成酵素を同定した(平野泰弘ら、未発表)。これらのことから、核膜の継続的な補修がクロマチンポテンシャルの維持に重要であることがわかった。 (2)非コードRNAとの相互作用:染色体上のRNAタンパク質複合体も相分離により、クロマチン相同領域を対合させることを報告した(Hiraoka, Curr Genet 2021)。一方、非コードRNA領域の対合にも減数分裂コヒーシンRec8が必要であり、Rec8が作るクロマチン軸が相同染色体の対合に関与することがわかった (Sakuno et al, Nucleic Acids Res 2022)。 (3)ヒストン修飾:DNA複製の開始には MCM複合体のクロマチンへのローディングが必要であるが、この過程に、ヒストンH4K20のメチル化レベルが重要な役割を果たすことを明らかにし、ヒストン修飾がクロマチンポテンシャルの形成に重要であることを示した。この成果は論文として報告した(Hayashi-Takanaka et al, Nucleic Acids Res 2021)。また、分裂酵母テロメア近傍のクロマチン凝縮とヒストン修飾の関係について総説を発表した (Yadav et al, Microorganisms 2021)。
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