研究領域 | ニュートリノで拓く素粒子と宇宙 |
研究課題/領域番号 |
18H05541
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐藤 修 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 特任講師 (20377964)
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研究分担者 |
有賀 智子 (古川) 九州大学, 基幹教育院, 助教 (00802208) [辞退]
小川 了 東邦大学, 理学部, 教授 (10256761)
青木 茂樹 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (80211689)
小松 雅宏 名古屋大学, 教養教育院, 准教授 (80345842)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 原子核乾板 / エマルジョン / エマルション |
研究実績の概要 |
名古屋大学F研究室内に既存の原子核乳剤製造装置の10倍の製造能力を持つ新装置を立ち上げ、ニュートリノ実験で用いる原子核乳剤の供給体制の構築を目的にした研究を行っている。2020年度は、2019年度に整備した、メインタンク、(脱塩)水洗タンク、化学増感(後熟)タンクを連動して一連の工程を新装置群で行うべく、装置間の配管整備、操作盤の整備を行った。各タンクの洗浄の効率化、工程の効率化を進めた。一連の装置が揃ったので乳剤製造部屋の暗室化、隣接した調液準備室の整備を行った。 しかし、原子核乳剤製造の3つの工程の第2工程である脱塩・分散工程のところで原子核乳剤が水と均一に混じらない分散不良が生じた。これを改善すべく原子核乳剤の攪拌の仕方、攪拌プロペラの形状変更、原子核乳剤の分散処理用の水酸化ナトリウムの添加の仕方を調整し、データ解析を繰り返すことで分散不良を克服した。これに予想外の時間を費やしてしまったため、当初予定からは約3ヶ月遅れている。 2021年度より、実際に原子核乳剤を必要とする最初の実験(DsTau実検)に原子核乾板の供給がスケジュール(2021年7月納品)されおり、大量生産に向けて連続製造に向け工程のポリッシュ、廃液処理方法を確立した。 また、次世代の飛跡読み取り装置(HTS2)で飛跡を読み取るために、原子核乳剤結晶サイズの最適化研究も始めた。より高速で飛跡を読み出すためにレンズ倍率が下がるため、飛跡を構成しているグレインが大きい方が検出効率向上を見込めるからである。現在までに数バッチを作った所で、結晶サイズを大きくすることには成功したがノイズ(Fog)が少し多いなどの課題もみつかった。この乳剤に関してもノイズ削減、長期特性の確認・改良開発を引き続き進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
原子核乳剤製造の3つの工程の第2工程である脱塩・分散工程のところで原子核乳剤と水が均一に混ざらないという分散不良が生じた。これを改善すべく原子核乳剤の攪拌の仕方、攪拌プロペラの形状変更、原子核乳剤の分散処理用の水酸化ナトリウムの添加の仕方を調整し、データ解析を繰り返すことで分散不良を克服した。最終的にはペーハーの調整と手での攪拌を行うことで均一な分散ができることが確認できた。これに予想外の時間を費やしたため、当初予定からは約3ヶ月遅れた。 しかし実際に原子核乾板を必要とする最初の実験(DsTau実検)に原子核乾板を供給するスケジュール(2021年7月納品)には間に合うように進んでいる。また、実際に連続製造が始まると問題になる廃液処理の流れを確立し、大量生産を開始できる。その他、原子核乾板の連続・大量生産に向け工程の見直し、簡素化を進めている。改善しつつ大量生産が開始できる状態に持ってきている。 当初スケジュールよりは、やや遅れているが概ね目標は達成しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
原子核乳剤の分散工程が安定したので週に2バッチの生産を継続的に行う。作業員のトレーニング、乳剤製造失敗等のエラー情報の共有、マニュアル整備を行い2021年度以降に原子核乾板の使用をみこんでいる実験、DsTau, FASER,SND,GRAINE,NNJAに原子核乾板をそれぞれ100~500平米規模で供給できる体制を構築する。また、連続製造に伴い廃液処理も実際に継続的に行われるため、廃液量の削減、作成された原子核乳剤の保管方法を確立する。各実験に供給する際にフィルム化・フィルムを定型にカットする作業の方法確立・効率化を行う。 さらに原子核乾板塗布時に厚み1ミクロン程度の保護膜を付与することで現像後の表面銀が出ないように研究開発を行い、表面銀の取り除き作業をなくす。表面銀の取り除きにはフィルム1枚当たり20分程度かかる。実験で数1000枚程度のフィルムを使用することを考えると原子核乾板ユーザーにとって大変大きな省力化になるため要求が強い。フィルムの供給後は実験フループからのフィードバックを受けて改良を行う。安定供給できる体制を構築後は、工程の無駄を省き生産能力の向上・性能の安定化をはかる。また、次世代読み取り装置(HTS2)での読み取りに最適な原子核乳剤の開発、特に大粒子化及び長期特性の改善も並行して行う。
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