研究領域 | ニュートリノで拓く素粒子と宇宙 |
研究課題/領域番号 |
18H05543
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
津村 浩二 京都大学, 理学研究科, 助教 (40648101)
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研究分担者 |
下村 崇 宮崎大学, 教育学部, 准教授 (00447278)
安田 修 首都大学東京, 理学研究科, 教授 (50183116)
杉山 弘晃 富山県立大学, 工学部, 准教授 (50548724)
佐藤 丈 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60322294)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | ニュートリノ / 荷電レプトン / ヒッグス / 暗黒物質 |
研究実績の概要 |
ニュートリノ振動パラメタの実験の間の不一致を説明する方法や、実験を利用してパラメタ縮退を解く方法について研究を行った。低エネルギー実験の有効性と長基線実験の必要性が明らかになってきている。 ミュオンが原子中で電子へ変換される過程について詳細な計算を行った。ミュオン偏極に注目して解析することで新物理の相互作用の形について検証能力を高められることが分かった。また、原子中の電子対の運動量分布を考慮して理論計算の精度を高めた。さらに深層学習を用いた荷電レプトンフレーバの破れのデータ解析についても取り組んでいる。 大統一理論とは異なる起源を持つ陽子崩壊の可能性について研究を行った。強いCP問題を解決するPQ機構とニュートリノの微小質量を説明するシーソー機構を組み合わせることで、陽子崩壊を予言する新模型を構築した。陽子崩壊探索のモードを組み合わせることで大統一理論と区別することも可能である。 ミュオン異常磁気能率の標準模型の予言からのズレは長年の問題であるが、いくつかの方向からこの問題の解決および検証に取り組んだ。ズレを説明出来るレプトンフレーバー数の差をゲージ化した模型について、その最小拡張がニュートリノ振動パラメタと整合するかどうかについて検討し、近い将来にこの可能性を排除できることを示した。また、模型の予言する軽いスカラーボソンを加速器で生成してどこまで検証できるかについても調べた。一方、新しい模型として二重荷電ヒッグスを含む最小模型の構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KamLANDと太陽ニュートリノ観測から決定されるニュートリノの質量二乗差の有意なズレは、3世代パラダイムにおいては非標準相互作用を導入することで説明できる。非標準相互作用はニュートリノ振動パラメタの決定に余計な不定性を持ち込むため、非標準相互作用を含めた振動パラメタを決定する方法について検討している。 ミュオン原子中で起きる可能性のあるμe→eeというレプトンフレーバーを破る過程に注目して研究を行っている。特にミュオン原子中のミュオン偏極の効果と電子対の運動量分布について詳細な計算を行うことで、この過程を通じた新物理の探索能力を見極めた。また、深層学習を使ってのデータ解析にも取り組んでいる。 陽子崩壊は大統一理論が予言する顕著な信号であるが、大統一理論以外にこのような現象を起こす可能性はないかについて検討を行った。強いCP問題を解決するPQ対称性とレプトン数対称性を同一視する模型から、次元7演算子によって陽子崩壊を引き起こすことが出来ることが明らかになった。さらにこの陽子崩壊は実験によって大統一理論の予言と区別することも可能である。 ミュオンの異常磁気能率の標準模型からのズレを説明する模型として、レプトンフレーバー数の差をゲージ化したものがある。この模型の最小の拡張とニュートリノ振動パラメタの整合性について研究を行った。振動パラメタ決定の精密化が進めば、近い将来に最小模型を排除できることが明らかになった。また、この模型の予言する軽いスカラーボソンを加速器実験で生成して検証する方法についても研究を行った。一方、ミュオン異常磁気能率のズレを説明する新しい枠組みとして二重荷電ヒッグスを含む最小模型を提案した。
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今後の研究の推進方策 |
T2K実験のようなエネルギーのあまり高くない実験は、無関係な非標準相互作用のパラメタの効果が効きにくいことが明らかになった。このスキームの上で物質効果を見ることの出来る長基線実験でパラメタ縮退を解く方法について検討していく。 これまでに検討されている大統一理論以外の新しいタイプの大統一理論について研究を行う。通常の大統一理論やその他の模型のが予言する陽子崩壊などと比較し、模型の検証が可能であるかを検討していく。 離散フレーバー対称性に基づいたミュオン異常磁気能率のズレを説明する新模型を提案する。また離散対称性の起源となる余剰次元などの可能性についても検討を行う。 ニュートリノがディラック粒子である可能性を考慮して新模型の構築を行う。
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