マイクロ流体デバイスの素材であるシリコーン樹脂(PDMS)を用いて PDMS-Ceiling chip(PC チップ)を作製し、このPC チップを精巣組織片に被せることで精子形成効率を向上させることに成功した。今回新たに、組織片を丸ごと培養するのではなく、1本の精細管の培養を実現するためのPCチップを開発した。マウス精細管を単離して気相液相境界部培養法で培養すると培養液の表面張力や組織自身の収縮により、精細管は丸まってしまうことから、精細管をストレッチ状態のまま培養するPDMSチップを開発した。それを用いて精細管を単離状態で培養することにより、精子形成の進展の可否を検討した。その結果、効率は低下するものの伸長精子細胞までの精子形成が進行できることを確認した。また培養条件の中で酸素濃度が重要であり、10%程度の低酸素濃度が適していることを見出した(Plos One 2023)。また、実際に培養期間中に培養スペースを変更することの精子形成への影響を、PCチップを交換することで検討した。その結果、高さ100μmのPCチップで培養を開始し、2週間後に高さ160μmのPCチップに代えることで、精子完成における伸長精子細胞の産生効率が優位に改善することを見出した(論文投稿中)。培養液の改良として、抗酸化剤とリゾリン脂質が有効であることを見出した。それはラットの精子形成にも有効であり、これまで不可能だったin vitroでの半数体産生が可能となった(Sci Rep 2021)。さらにラットでのin vitro精子形成の研究を進め、産生された円形精子細胞を用いて産仔にも成功した(投稿中)。マウス以外での体外精子形成とそこで得られた配偶子での産仔は世界で初めての成果である。
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