生体内に匹敵する“高インテグリティを実現するin vitro卵子産生系”を構築することを最終目標として、主に以下の研究を実施した。 1)in vitroで産生された卵子の特性解析 in vitroで産生された卵子は、体外受精による正常受精率が低い。そこで、受精に影響しうる要素として、透明帯、表層顆粒およびカルシウムオシレーションについてin vitro由来卵子とin vivo由来卵子を比較解析した。その結果、in vitro由来卵子ではin vivo由来卵子より透明帯が有意に薄い、表層顆粒が有意に少ない、カルシウムオシレーションの回数が有意に少ないなどの特徴があり、これが正常受精率が低い一因と考えられた。一方で、種々の培養系を改定してきた結果、C57BL/6NやFVB/Nなどの近交系でも二次卵胞から成熟卵子を産生し、マウスを誕生させることが可能になった。 2)in vitro卵子産生系のためのChemically Defined Medium (CDM) の検討 オミクス解析の結果をもとに、CDMに添加する因子を選定し、CDMによるPGCから成熟卵子の産生を目指した。その結果、12.5日齢マウス胎仔卵巣を17日間培養して得られた二次卵胞は、dbcAMPやCHIR99021の添加により添加前より有意に発育した。得られた二次卵胞をさらに培養したところ、Activinおよびリノール酸の添加で有意に発育が促進した。また、卵胞培養14日目に卵母細胞ー卵丘細胞複合体を採取し、17時間成熟培養した。そのうち一部は第二減数分裂中期まで発育した。また、卵胞培養および成熟培養時にFetuin Bを添加することで、体外受精後、受精卵を得ることができた。得られた受精卵の一部は胚盤胞期まで発生することが明らかとなった。そのため、少なくとも初期胚発生を支持できる成熟卵子がCDMで産生可能になった。
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