研究領域 | 配偶子インテグリティの構築 |
研究課題/領域番号 |
18H05548
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
小林 俊寛 生理学研究所, 行動・代謝分子解析センター, 助教 (20587414)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 始原生殖細胞 / 多能性幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は、領域の目指す配偶子インテグリティの構築に“種を越えた普遍性”という新たな要素を加えることを目的とする。そこで具体的に、ラットとウサギという実験動物 2 種を用い、始原生殖細胞 (PGC) 発生の理解とその in vitro で再構築を行う。そして、すでに研究が進んでいるマウスやヒトなどとの比較により、種を越えた保存性と、種ごとの違いを明らかにする。当該年度は以下の 2 点に焦点を当て、研究を進めてきた。 1.ラット、ウサギにおける PGC 形成機構の解明 ラットやウサギの PGC 発生に関する知見は極めて少ないため、いつどの時期に PGC が形成されるかを明らかにした。ラットにおいては、発生中の PGC を可視化、および純化・回収するために、PGC 特異的に蛍光タンパク質を発現する Prdm14-H2BVenus および Tfap2c-tdTomato レポーターラットを作製した。その詳細な解析により発生中のラット PGC の形成時期、場所を明らかにするだけでなく、その後の発生動態を明らかにすることに成功した。またウサギにおいてはレポーター動物を作製途中であるため、免疫染色による組織学的な解析により、どの時期に PGC が形成されるかを明らかにした。 2.ラットとウサギの多能性幹細胞からのin vitro PGC 誘導 ラット、ウサギ in vitro PGC を誘導するため、起点となる多能性幹細胞を樹立・作製した。ラットは 1. で用いたレポーターラットの胚盤胞から ES 細胞を樹立した。またウサギではすでに樹立した野生型ウサギの ES 細胞を用いて PGC 特異的に蛍光タンパク質を発現する NANOS3-tdTomato ノックイン細胞株を作製した。両者とも蛍光タンパク質の発現を指標にした分化誘導条件の最適化のための基盤が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラットでは当初の予定通り、新たに作製した Prdm14-H2BVenus および Tfap2c-tdTomato レポーター動物を用いた PGC の可視化に成功した。それらから樹立した ES 細胞は in vitro PGC の誘導実験にも使えるなど非常に有用な動物となった。ウサギではまだそのようなレポーター動物の作製には至っていないが、すでにレポーターを持つ ES 細胞の樹立には成功しており、in vitro PGC の誘導実験の条件検討をはじめている。
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今後の研究の推進方策 |
ラットでは、作製したレポーターラットを用いて、各ステージにおける PGC を回収する。回収した PGC のトランスクリプトーム解析を行い、PGC 発生過程における遺伝子発現の変化を明らかにする。また PGC が出現する前の胚におけるエピブラストも併せてトランスクリプトーム解析を行い、エピブラストから PGC への分化に伴う変化も明らかにする。ウサギでは、同様のレポーターがまだ作製途中であるため、その作製を進める。一方、ウサギでは、PGC 誘導の起点となる多能性幹細胞の状態(naive state や primed state 等)が不鮮明である。そこで、多能性幹細胞および、野生型ウサギの初期胚を用いたトランスクリプトーム解析も行い、多能性幹細胞の状態を明確にする。 さらにラット・ウサギの多能性幹細胞を起点とした in vitro PGC 誘導法の確立に向け条件検討と最適化を行う。また並行して、生体の胚から単離した発生段階の異なるエピブラストを培養し、最も効率的に PGC を分化誘導できる発生段階を同定する。その結果を多能性幹細胞からの分化誘導に反映し、より効率的な PGC 誘導に結び付ける。誘導に成功した in vitro PGC は、生体内 PGC とグローバルな遺伝子発現比較を行い、その類似性を明らかにするとともに、更なる in vitro での成熟化を目指す。
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