計画研究
研究 1. ラットとウサギの多能性幹細胞からのin vitro PGC 誘導: ラット・ウサギの多能性幹細胞を起点とした in vitro PGC 誘導法について、その更なる最適化と、誘導された in vitro PGC の特性解析を行った。また機能評価として、in vitro PGC を生殖巣への移植を介した配偶子産生を行った。研究 2. 転写因子を用いた分子基盤の解明: マウスやヒトでは PGC の成立・発生に重要な転写因子を多能性幹細胞に強制発現することで、サイトカイン非依存的に PGC を分化誘導できることが知られている。そこで研究 1 で確立する in vitro PGC 誘導系を用い、ラットやウサギの多能性幹細胞では、どのような転写因子の組み合わせが効率的に PGC へ分化誘導できるかを検討した。研究 3. 動物種の特性を活かした in vitro gametogenesis の普遍性評価と新たな評価系の確立: ラットは多能性幹細胞を用いることでマウスとの間で異種間キメラの作製が可能であるため、その特性を活かした新たな配偶子インテグリティの評価系を確立した。具体的には Prdm14 KO ラットという生殖細胞を完全に欠損するラットを用いることで、ラット多能性幹細胞由来の配偶子形成能をより確実に評価することが可能になった。また異種であるマウスの多能性幹細胞を用いることで、マウスの機能的な精子細胞をラット体内で作ることにも成功した (Kobayashi et al., Nat Commun (2021))
2: おおむね順調に進展している
本年度掲げた 3つの研究においてそれぞれ進展が見られた。研究1.ラットとウサギの多能性幹細胞からのin vitro PGC 誘導では、ウサギについてはこれまでの知見を論文投稿し、現在リバイス中である。またラットについては雄の ES 細胞由来の in vitro PGC を新生児精巣へ移植することで精子の作出に成功した。研究2. 転写因子を用いた分子基盤の解明では、ラット、ウサギそれぞれで、候補となる転写因子を薬剤依存的に強制発現できる細胞株を樹立した。研究3.動物種の特性を活かした in vitro gametogenesis の普遍性評価と新たな評価系の確立では特に、異種間の胚盤胞補完により、ラット体内で機能的なマウス精子細胞の作出に成功し、成果を論文として報告することができた (Kobayashi et al., Nat Commun (2021))。以上のことから、おおむね順調に進展していると評価する。
研究 1.ラットとウサギの多能性幹細胞からのin vitro PGC 誘導: 前年度から引き続き、ラット・ウサギの多能性幹細胞を起点とした in vitro PGC 誘導法について、その誘導時における更なる培養条件最適化に加え、in vitro での成熟化もしくは増幅に注力して研究を行う。また特に in vitro PGC の機能評価として、生殖巣への移植を介して成熟させた配偶子 (精子・卵子) を用いた体外受精・顕微授精を行うことで、その受精能と個体発生能を明らかにする。研究 2. 転写因子を用いた分子基盤の解明: マウスやヒトでは PGC の成立・発生に重要な転写因子を多能性幹細胞に強制発現することで、サイトカイン非依存的に PGC を分化誘導できることが知られている。そこで研究 1 で確立する in vitro PGC 誘導系を用い、前年度に引き続き、ラットやウサギの多能性幹細胞では、どのような転写因子の組み合わせが効率的に PGC へ分化誘導できるかを検証する。特に今年度の研究から、マウスやヒトとの違いも明らかになってきたことから、ラット、ウサギ独自の分子基盤を明らかにする。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Nature communications
巻: 12 ページ: 1328
10.1038/s41467-021-21557-x