計画研究
本計画研究は卵子のインテグリティの予見を目指し、染色体イメージングを中心的に用いた細胞生物学的研究を行った。特に、卵子のインテグリティにとって最も重要な要素の一つが染色体数の正常性であることから、卵子の染色体分配エラーの原因となる要素を特定し、それに関わる分子を同定することを目的とした。in vitro gametogenesisで作られた卵子(invitro卵子)のライブイメージングのため、培地添加型の蛍光プローブによるラベリング技術を確立した。蛍光プローブとしてsiR-DNAとsiR700-Tubulinを採用し、最適な条件を検討したことで減数第一分裂を通して染色体動態に異常が検出されない染色体・紡錘体イメージングを確立した。また、新たに開発された手法により作成されたin vitro卵子の提供を受け、これらのライブイメージングを行った。この結果、in vitro卵子のプライマリーな欠損を見出した。並行して、自然老化マウスの卵子から染色体分配装置である紡錘体を顕微操作によりちぎり取り、LC-MS/MS解析による半定量的解析に供することで、コントロール卵と比較して量が異常なタンパク質の同定を試みた。若い卵子との半定量的な比較から老化で有意に減少するタンパク質群を見出し、これらの中から染色体分配インテグリティに関わる有力な候補を得た。また、卵子の紡錘体安定性に関わる分子の同定を進め、動原体Ndc80複合体がアンチパラレル微小管架橋因子Prc1を動原体に濃縮させることで紡錘体形成を促進することを見出した(Yoshida et al, Nat Commun, doi:10.1038/s41467-020-16488-y)。
1: 当初の計画以上に進展している
in vitro卵子のイメージングから染色体分配エラーのプライマリーな原因を見出すことができた。また、老化卵子における紡錘体のタンパク質量変化の一端を捉え、染色体分配インテグリティを担う候補因子を絞ることができた。さらに、紡錘体形成の機構の解析から動原体Prc1が紡錘体形成に重要な役割を果たすことを見出し報告した。
in vitro卵子のライブイメージングを継続するとともに、これまでの結果から見出された欠損について、分子的な理解を進めるための実験を行っていく。動原体におけるPrc1が紡錘体形成に必要であることから、Prc1の制御および紡錘体形成への作用機序の解析を進める。また、紡錘体ちぎり取り解析から得られた老化依存的に減少するタンパク質について検証実験を行うとともに、機能解析を行う。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 備考 (3件)
Nature Communications
巻: - ページ: -
10.1038/s41467-020-16488-y
EMBO reports
巻: 20 ページ: -
10.15252/embr.201947905
http://chromosegr.riken.jp/index.html
https://www.bdr.riken.jp/jp/research/labs/kitajima-t/index.html
https://www.riken.jp/research/labs/bdr/chromo_segr/index.html