研究領域 | 配偶子インテグリティの構築 |
研究課題/領域番号 |
18H05550
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
八幡 穣 筑波大学, 生命環境系, 助教 (10586457)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
|
キーワード | 配偶子 / 自家蛍光 / 内在性蛍光 / 共焦点顕微鏡 / 可視化技術 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
具体的内容:本年度は内在性蛍光パターンをスキャンするために、4つの励起波長で順番に組織内を照明し、それぞれの励起波長について戻ってきた蛍光の強さと波長を記録する顕微鏡制御プログラムを作成した。また、前記の開発した顕微鏡制御プログラムによりマウス精巣の内在性蛍光パターンの分布の可視化が可能となることを確認した。また本年度の実験により、in vitroでPGCから産生されたマウス卵子集団内の一細胞ごとに内在性蛍光パターンを観測して記録した後に、観察した卵子を回収し、発生能解析を行った結果、内在性蛍光の解析が発生能に影響を与えないことを確認した。 研究成果の意義:本研究はインテグリティを予見する革新的技術基盤の確立のために、CRIF解析法を配偶子の解析に適するように発展させることを目指している。具体的には、1)原始卵胞など立体的組織の内在性蛍光パターンを解析できる3次元解析手法の基盤構築、2)in vitroで産生された卵子の内在性蛍光パターンの分析、3)器官培養された精巣で形成されたマウス精子の内在性傾向パターンの分析を主な目的としている。本年度の成果は次の研究成果の重要性で説明するように、それぞれの項目における重要なマイルストーンとなるものである。 研究実績の重要性:まず顕微鏡制御プログラムについては、生きた組織の内部を共焦点顕微鏡で断層撮影しながら各細胞の内在性蛍光パターンを記録する方法の開発において重要な基盤となる。また内在性蛍光パターン分析がその後の発生能に影響を与えないことが確認されたことにより、内在性蛍光パターンによる発生能分析の重要な前提条件が満たされたことを意味する。また器官培養された精巣の内部における内在性蛍光パターンが可視化可能であることが示されたことで、内在性蛍光パターンに基づいて精巣内の精原細胞の状態を評価するための不可欠のステップをクリアした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、次の3つの研究項目を推進する計画としている。具体的には、1)原始卵胞など立体的組織の内在性蛍光パターンを解析できる3次元解析手法の基盤構築、2)in vitroで産生された卵子の内在性蛍光パターンの分析、3)器官培養された精巣で形成されたマウス精子の内在性傾向パターンの分析を主な目的としている。 本年度は、下に説明するようにそれぞれの項目における重要なマイルストーンを達成しており、概ね順調に進展している。まず、生きた組織の内部を共焦点顕微鏡で断層撮影しながら各細胞の内在性蛍光パターンを記録する方法の開発においては、これを可能にする顕微鏡制御プログラムが重要な基盤となる。本年度は内在性蛍光パターンをスキャンするために、4つの励起波長で順番に組織内を照明し、それぞれの励起波長について戻ってきた蛍光の強さと波長を記録する顕微鏡制御プログラムの作成が完了した。次に内在性蛍光パターン分析による発生能分析では、細胞の内在性傾向パターンががその後の発生能に影響を与えないことが重要な前提条件となる。本年度の実験により、in vitroでPGCから産生されたマウス卵子集団内の一細胞ごとに内在性蛍光パターンを観測して記録した後に、観察した卵子を回収し、発生能解析を行った結果、内在性蛍光の解析が発生能に影響を与えないことが確認された。さらに、マウス精巣の内在性蛍光パターンの分布の可視化は、内在性蛍光パターンに基づいて精巣内の精原細胞の状態を評価するための不可欠の技術である。これについては精巣の生理状態に酸素条件が大きな影響を与えることがわかったことから、期間を延長して研究を行い、器官培養された精巣の内部における内在性蛍光パターンが可視化可能であることが示す結果が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
3つの研究項目を、それぞれ下記の計画で推進する。 1)原始卵胞など立体的組織の内在性蛍光パターンを解析できる3次元解析手法の基盤構築:本年度は、内在性蛍光パターンをスキャンするために、4つの励起波長で順番に組織内を照明し、それぞれの励起波長について戻ってきた蛍光の強さと波長を記録する顕微鏡制御プログラムの作成が完了した。そこで次年度はこれをさらに発展させ、得られた画像から内在性蛍光パターンを分析しその3次元分布をマッピングするアルゴリズムを作成する。 2)in vitroで産生された卵子の内在性蛍光パターンの分析:本年度の実験により、in vitroでPGCから産生されたマウス卵子集団内の一細胞ごとに内在性蛍光パターンを観測して記録した後に、観察した卵子を回収し、発生能解析を行った結果、内在性蛍光の解析が発生能に影響を与えないことが確認された。そこで次年度は同様の実験系を用いて、内在性傾向パターンと胚盤胞への発生能との関係を分析する。本実験については領域内で相互にin vitro卵子成熟技術および顕微鏡可視化技術の技術移転を行い研究の効率化を図る。 3)器官培養された精巣で形成されたマウス精子の内在性傾向パターンの分析: マウス精巣の内在性蛍光パターンの分布の可視化は、内在性蛍光パターンに基づいて精巣内の精原細胞の状態を評価するための不可欠の技術であるが、本年度の研究からこの実証が成功している。そこで、精原細胞にGFPマーカーを挿入した組み替え生物の精巣を用いて、観測された内在性蛍光パターンのアノテーションを行う。これについては領域内での連携により組み換え生物の精巣の提供を受けることで、あらたな遺伝子組み換えのステップを省略し効率的に推進する。
|