研究領域 | 配偶子インテグリティの構築 |
研究課題/領域番号 |
18H05551
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
吉田 松生 基礎生物学研究所, 生殖細胞研究部門, 教授 (60294138)
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研究分担者 |
中村 隼明 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (30613723)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 生殖細胞 / レパートリー / 細胞系譜 / バーコーディング |
研究実績の概要 |
2019年度は以下のような研究を遂行し、生殖細胞の発生様式の異なる哺乳類と鳥類における配偶子インテグリティ成立プロセスの解析を進めた。 まず、2018年度に開発を進めたマウスの発生期の生殖細胞の遺伝子バーコーディング実験系の有用性を確認した。具体的には、妊娠マウスに薬剤(タモキシフェン)を投与することで、胎児の生殖細胞特異的に多数の異なる配列(バーコード)を導入する実験条件を確立し、発生の進んだ段階で生殖腺あるいは生殖細胞を回収して、そのゲノム領域に含まれるバーコード配列をPCR増幅したのちに次世代シーケンサで解析した。その結果、計画通りに生殖細胞に多様なバーコードが導入されることを確認し、得られたシーケンスデータを統計的に解析してレパートリー数の推計を開始した。次いで、2018年度にマウス精巣を異なる温度で培養して明らかにした、in vitro精子形成、特に減数分裂の進行が高温によって妨げられる分子メカニズムの解明を進め、温度感受性ステップを絞り込んだ(以上は、研究代表者吉田が行った)。 鳥類においては、2018年度に樹立したニワトリ生殖細胞の培養系を用いて、生殖細胞への遺伝子導入法を検討した。具体的には、培養生殖細胞に外来遺伝子をトランスフェクションし、蛍光あるいは薬剤耐性によって恒常的にGFPを発現する生殖細胞株の選別を進めている。また、選別した少数の生殖細胞の培養が困難であるため、単一細胞から効率的に増幅する培養法の開発を進めている (以上は、研究分担者中村が行った)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のように本研究は進行している。バーコード導入や培養条件の最適に当初計画以上に時間がかかった上、新型コロナウイルス感染症の広がりで動物実験のスローダウンを余儀なくされた。しかし、着実に実験条件の最適化を進めることができ、今後信頼できるデータの取得が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、現在進行している研究を推進することで、本研究の目的の達成を目指す。いずれも、本研究領域の研究の進展に貢献することが期待される。マウス生殖細胞のレパートリー動態については、本年度までに確立した実験系を用いて多数回の解析を行ってデータを蓄積する。海外研究協力者とともに数理統計解析を行い、個体に含まれる生殖細胞レパートリーの変遷を推定する。レパートリーが減少する段階が同定されれば、その時期の生殖細胞の不均一性を検討する。さらに、細胞系譜と遺伝子発現の情報を紐づけて解析する実験系を導入する。精子形成の高温感受性については、異なる温度において器官培養を行なった精巣サンプルを用いて、減数分裂の進行に関わる分子マシナリーの存在や局在、染色体の状態を詳細に解析する。それによって、高温で障害を受ける減数分裂のステップと分子マシナリーを絞り込む。鳥類生殖細胞については、ニワトリ培養生殖細胞への効率的な遺伝子導入法を確立し、恒常的にGFPを発現する細胞株を樹立する。次いで、生殖細胞株を移植し、検定交雑で得られた後代の遺伝子型と表現型を解析して、恒常的にGFPを発現する遺伝子導入ニワトリを選別する。さらに、ニワトリ培養生殖細胞に適した凍結保存法を開発し、樹立した細胞株の凍結保存を進める。
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