研究領域 | 配偶子インテグリティの構築 |
研究課題/領域番号 |
18H05552
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小林 悟 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 教授 (90225508)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / 配偶子 / 始原生殖細胞 / 品質管理 / 選択機構 |
研究実績の概要 |
昨年度にトランスポゾンが転移してゲノム・インテグリティが低下した生殖系列を排除する品質管理機構が存在することを論文として発表したが、トランスポゾンの転移が実際に起こっている始原生殖細胞が存在するかは不明であった。生殖系列中において、トランスポゾンの転移を抑制する分子として、piRNA(Piwi interacting RNA)が知られている。そこで、piRNAの機能が低下している始原生殖細胞が存在するかを調べたところ、少数ではあるが、piRNAの機能が低下している始原生殖細胞が存在することが明らかとなった。今後、この始原生殖細胞では、piRNAの産生あるいは機能に関与するタンパク質の量が低下しているのか、実際にトランスポゾンは転移するのか、品質管理機構により排除され次世代を産生することはないのかについて詳細に解析する予定である。以上の結果は、始原生殖細胞集団にヘテロジェナィティが存在することを示唆する。さらに、始原生殖細胞のヘテロジェナィティを明らかにするため、始原生殖細胞を分取し、scRNA-seq (single cell RNA sequencing)を行った。その結果、始原生殖細胞には、生殖質中に含まれる母性分子(卵形成過程で合成され卵に蓄積する分子)を多く含む集団と、少ない集団に分かれることが明らかになった。母性分子の取り込みが少ない始原生殖細胞において、piRNAの機能が低下すると予想しているが、この点を今後明らかにする予定である。また、母性分子を少量しか含まない始原生殖細胞の集団では、Nanosタンパク質とPgc (polar granule component) ペプチドが体細胞性遺伝子(体細胞で発現し機能する遺伝子)の発現を抑制し、始原生殖細胞の発生を正常に進行させることを示唆する結果を得た。今後、体細胞性遺伝子の発現抑制の意義について解明する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りに研究成果が得られ、原著論文として発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
計画の変更などはない。始原生殖細胞のヘテロジェナイティを明らかにする研究を推進するととtもに、PGCが正常に発生するために必要なメカニズムを明らかにし、原著論文として発表することを目指す。
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