計画研究
2022年は卵巣組織切片から採取した単一細胞(卵母細胞、顆粒層細胞)の解析を進めマウス卵巣卵母細胞のサイズートランスクリプトーム関係の多様性を同定した。卵母細胞の直径とトランスクリプトームの間に線形な関係があることを発見し、これを利用して、2次卵胞から初期の胞状卵胞に至る過程において、卵母細胞のサイズからトランスクリプトームを予測する統計モデルを作出した。このモデルは実際のデータをよく説明した。すなわち、卵母細胞のサイズから平均的なトランスクリプトームを計算することができた。このモデルと実際のデータとの差異を計測することで、平均的なサイズートランスクリプトーム関係から逸脱した卵母細胞を同定した。これらの卵母細胞のトランスクリプトームは、直径から予測されるよりも20μm以上小さな卵母細胞のトランスクリプトームに類似していた。すなわち、形態的な成長に比べて「遺伝子発現プロファイルの形成が遅れている」可能性が示唆された。このような卵母細胞は、形態的には異常が認められない卵胞(閉鎖卵胞ではない)のうち、10%程度であった。一方、顆粒層細胞についても卵母細胞に直接接する細胞と、それ以外の細胞が存在し、同一の細胞種でありながら形態的にも異なっている。組織切片中でこれらの細胞を分取し異なる発現プロファイルを同定した。上述の卵母細胞のサイズ―トランスクリプトーム関係において、大きさが類似している「遺伝子発現プロファイルの形成が遅れている」卵母細胞と、「通常の」卵母細胞に隣接する顆粒層細胞の間に発現の差異を同定した。これらの結果から、卵胞成熟過程における組織学的な細胞形態や細胞位置の情報とトランスクリプトームの関係が示唆された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Proc Natl Acad Sci U S A
巻: 120 ページ: e2213810120
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巻: - ページ: -
10.1101/2022.12.14.520513