研究概要 |
早稲田チームは引き続きバブル関連の実験研究を継続している.不動産の価格とレントに関する論争(不動産価格が高くなるからレントが高くなるのか,それとも逆なのか)を中心に理論・実験研究を実施している.ファイナンスや経済理論ではレントが不動産価格を決めるのが標準理論である.サンクコストは人々の行動に影響を与えないからである。ところがサンクコストが人々の行動に影響を与えてしまう実験結果があり,これを不動産市場実験で検証した.実験結果は不動産価格の上昇がレントの上昇に結びつくことを示している. 信州チームは,同じ財を複数単位取引する,自主流通米入札市場で以前実施されたオークションルールのパフォーマンスの検証を継続している.昨年までの研究で,Demand Reduction現象を観察し,今年度は,コメ市場と同じく指値を許すもののコメ市場とは異なる落札ルールに基づく別の市場実験を実施して比較分析し,米入札市場における買い手の特異な行動がDemand Reductionの主な要因であることを明らかにした,並行して、コメ市場における買い手行動は,既存理論が想定する利己的効用では説明がつかないことから,非利己的効用を持つ買い手が存在する他のオークション理論・実験分析について,関連の研究を進めている. 大阪チームは市場という公共財の供給問題を最も原始的な形(囚人のジレンマ)でとらえ,メイト・チョイス・メカニズムをデザインした.このメカニズムは協力をBackward Elimination of Weakly Dominated Strategiesで実現する.実験研究では,様々な環境で100%の協力を達成することを確認している.従来のナッシュ均衡やサンクションを用いるアプローチでは協力を理論でも実験でも達成できないという枠組みから脱却しつつあり,ブレイクスルーの可能性を感じている. なお,繰り越しをお願いした2人囚人のジレンマ状況において協力を達成するメカニズムの構築と分析およびそれを拡張した2人公共財実験等は予定通り完了し,論文を作成中である.
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