研究概要 |
今年度は,企業組織とその個々の構成員の意思決定と行動の原理に関して,理論と実験の両面から,いくつかの異なる研究課題に取り組んだ.課題は,経営経済学はアジアでの日本企業の戦略の調査,ビジネスゲームはシミュレーションモデルの開発とその教育効果からのフィードバック,そして証券市場と組織における個人の心理の脳神経科学分析である.まず,経営経済学の研究としては「なぜ中国やベトナムへの進出ブームが起こるのか」を問題意識として,日本企業による海外市場への参入戦略における模倣行動について調査と分析を行なった.また参入と逆の意思決定である撤退における企業組織の模倣行動についても調査を行った.次に,ビジネスゲームの研究としては,仮想現実での事業経営シミュレーションモデルの開発(名称 : ワンケー・クラインカンパニー)と,実際にそれを活用した実践型経営演習を学部生と大学院生対象の授業の中で実施し有用性の検証を進めた.その結果,商品コンセプトは同じでも,異なった業種及び業容(ビジネス・モデル)の提案と実践がなされそれらに対応する経営データ処理手法開発の課題を明確にすることができた.また,他の既存のシュミレーションソフト(ゲームエンジン)との併用も行い,比較検討及び課題抽出を行うことができた.さらに,会計の研究としては,企業会計の問題は証券市場問題と組織問題に分けて考察するのが通説であるが,証券市場問題と組織問題に共通した課題としての人の心理的問題が,いかに当該領域の問題に関わるかを検討した.そのために,証券市場実験と組織実験を行い,またその基礎となる脳のMRI実験を行った.
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