研究概要 |
1.経営経済学では,組織行動の理論研究の成果として,企業競争の1つの新しい理論モデルの構築を完成させた。研究対象は組織の中でも産業組織という企業の集合体であり,製品差別のある企業に参入退出による集合体の変化までモデル化されているので,産業組織のダイナミズムが表現可能である。一方,実証研究の成果として,55ヶ国,約175千人を被験者として起業活動の国際比較の調査を行なった。調査項目は起業の計画や意識経営能力の有無事業機会の認知,起業に対する価値観などで構成される。調査結果は著書「起業と経済成長」(東洋経済新報社)にまとめられた。 2.組織構造の教育方法の研究としては,昨年度に引き続きビジネスゲームの開発に取り組んだ。ビジネスゲームにおいて重要なのはリーダーを含めた集団的な意思決定および行動実践である。その意思決定プロセスを理解し効率的な仕組みを分析し演習において実践させることは,組織行動がどのように形成されるかの分析および考察に非常に役立つ。そこで,効率的な経営管理教育のための新たなビジネスゲーム演習の設計と運用手法を開発した。 3.経営者の意思決定メカニズムの研究を目的とし,fMRIを用いたニューロ実験を行った。最後通牒ゲームの分配割合提案者の脳内反応を測定した。同じ目的で行なった心理学実験で、共感性の高い提案者は、分配提案承認者の性格に応じた分配割合を提示してくることが確認できていたので、この脳内実験のデータを踏まえて、分配割合提案者の共感性・分配割合の決定が脳内のどの部位の賦活と連動しているかは残された課題となった。
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今後の研究の推進方策 |
企業組織の分析のため,海外の研究者や特定領域研究他班の研究者との共同研究を通じ,引き続き組織間競争のモデル構築を行なう。またこれまでに実施した実験室実験・fMRI実験において観察された一定の傾向と,これらの傾向をもたらすと思われる要因を含む実験と含まない実験による対照実験の結果を解析する。そして異分野研究者との学術交流を通じて研究成果を解釈するために,研究交流を行なっている脳神経科学者や心理学者などの異分野の研究者も交えて研究成果の検討とまとめを行なう。さらには,研究分担者が現在授業で行なっているビジネス・ゲーム演習の実施プログラムをより汎用性の高く効果の高いものに設計しマニュアルとして残したい。
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