研究概要 |
1. 経営経済学では, 上海交通大学と共同で中国人学生被験者による相対取引実験を行ない, データを統計分析した。採取したデータを分析した結果沿岸部出身者の方が内陸部出身者に比べて組織を組んで利得を高めることに長けている傾向が観察された。また, 多国籍企業の進出先, 出資比率, 撤退行動などに関する意思決定は, 進出先国の政策変更に伴う対応, 市場規模の拡張や企業成長を目的とする経済的合理性よりも, 他社の模倣と進出先国に対する正当性といった社会的合理性に大きく左右されることが明らかになった。 2. 組織構造の教育方法の研究としては, きわめて教育効果の高いビジネス・ゲーム演習の授業形式と運用マニュアルが多くの実践例をもとにした網羅的記録により作成した。情報を交換するだけのゲームによる経営演習に加えた集合型研修(組織, グループ化を伴う形式)による経営演習について, それぞれの可能性と限界に基づく機能別の分担や棲み分けが明確になったことにより, 今後のゲームエンジンおよび授業設計のための確固たる指針が形成できた。 3. 経営者の意思決定メカニズムの研究を目的とし, 昨年度に引き続きfMRIによる実験を行った。同じ目的で行なった心理学実験で共感性の高い提案者は分配提案承認者の性格に応じた分配割合を提示してくることをまず再確認した。次にこのデータを踏まえて、分配割合提案者の共感性・分配割合の決定が脳内のどの部位の賦活と連動しているかを脳科学専門の研究者の協力の下で複数の被験者を用いたfMRIによる実験を実施し、共通して賦活する脳の部位の調査を完了した。
|