計画研究
本研究の目的は、これまで"文化"の違いとして理解されてきた認知・信念システムの集団差ないし社会差が、異なる"制度"(すなわち,自己維持的信念・誘因結合体)への適応行動としてより適切に理解できること、すなわち、人間の本質的社会性が、異なる制度(人々の適応行動により形成・維持される誘因構造) への適応を促進するための「文化・心理的道具」として働いていることを明らかにすることにある。2008年度はこの目的達成に向け、一連の実験研究を実施してきた。そのため、特定領域研究「実験社会科学」集団班と共同で、学生ではなく一般市民からの被験者プールを作成し、同じサンプルに対して各種の実験(心理尺度の測定を含む)を2年間にわたり繰り返し実施する研究を開始した。この研究を含めたこれまでの実験研究では、(1)従来の文化心理学において文化的自己観の違いに基づくとされてきた同調行動が、実は特定の制度の下でのデフォルト適応戦略として理解されるべきであること、(2)最後通告ゲームで公正な提案を行う人は、自身が不公平な提案に直面するとより大きな感情の表出を行うこと、(3)実験用コンピュータ画面に(集団内での他者からの監視の手がかりとなる) 歌舞伎役者の目を表示すると、独裁者ゲームで内集団成員に対する分配額が増加するのに対して、外集団成員に対する分配額は増加しないこと、などをはじめ、制度への適応行動に関する多くの知見が得られた。また、心の文化差の解明を脳神経科学との共同により進めるための国際シンポジューム(2008年)、協力者と非協力者の表情からの判定可能性などをはじめとする一連のワークショップやシンポジュームを開催し、国内外の研究者との研究交流を進めると同時に、共同研究体制の確立をめざした。
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http://lynx.let.hokudai.ac.ip/members/yamagishi/