計画研究
本研究は、(1)社会規範の問題を中心に、人間の社会行動の特性を進化・生態学的な視点から組織的に検討し、(2)領域全体のテーマである実験社会科学の確立に向けて、その堅固な理論的・経験的基盤となり得る人間モデルを提供することを目的とする。近年、人間の社会行動に関する研究は、従来の社会諸科学(心理学・経済学・社会学・人類学など)内での検討に留まらず、行動生態学・進化生物学・神経科学を初めとする自然科学領域との間に、急速な学問的連携を作りつつある。本研究は、社会規範の形成と維持、互恵性を支えるメカニズムなど、社会科学の根本をなす問題群に、ゲーム理論を軸とする数理モデルと行動・生理実験を組み合わせることでアプローチし、社会システムの成立と制御を下支えしている人間の認知・感情特性群の働きを実証的に明らかにしていく。本年度は、経験サンプリングと呼ばれるフィールド調査技法と実験室実験を組み合わせることで、感情の働きと規範維持行動との間の関係を予備的に分析した。この予備調査から、日常場面での感情の発露パタンと実験室における感情の発露パタン・規範維持行動の間に明確な関係が認められ、平成20年度以降の本格的検討に向けて非常に有意義な知見が得られた。また、規範維持行動を支える感情喚起の程度には、社会階層間で差異が認められ、階層指標が高いものほど感情喚起水準も高いことが見いだされた。これらの知見は、平成20年度以降、一般成人を対象とする一連の実験調査によりさらに詳しく検討される予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件)
In M. Schaller, S. J., Heine, A. Norenzayan, T. Yamagishi, & T. Kameda(Eds.), Evolution, Culture, and the Human Mind. Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates. (In press)
New Issues and Paradigms in Research on Social Dilemmas (In press)
Journal of Theoretical Biology 248
ページ: 288-300