計画研究
本年度は、平成20年度の調査を拡張し、一般成人を対象にdiary methodと呼ばれる手法を用いて感情の働きと規範維持行動との間の関係についてデータを収集した。さらに「表情模倣」と呼ばれる他者表情に対する自動的模倣の機能について検討し、他者の感情状態について推論を行う場合に表情模倣が生起しやすいという知見を得た。加えて、平等分配規範が不確実性のもとで働きやすくなるという仮説を検証するために予備的な実験を行い、平成22年度における本格的な検討のためのパイロットデータを得た。これらの研究成果については、スタンフォード大学行動科学高等科学研究所においてRose McDermott教授(同研究所)らと共に検討を行った。また、社会的ジレンマ状況を用いた実験を実施し、他者行動を正確に予想するインセンティブがある場合でも、非協力者への制裁行使の程度が現実の行使の程度以上に大きく予想されることが再確認された。さらに、そうした制裁行使を現実以上に予想する者ほど、被制裁可能性の有無に応じて行動を変化させていることが示され、規範過大視という認知傾向が規範遵守行為と結びついていることが示唆された。本計画のもう1つの柱である一般互恵性の成立メカニズムに関する検討については、その具体例としての「講集団」に着目し、互助関係を成立させるための条件について、進化シミュレーションによる検討を行った。また一般互恵性が「内集団ひいき行動」とどのように関係するのかについても進化シミュレーションにより検討した。これらのシミュレーションの結果、一般互恵性が成立するためには、評判システム、集団ルールに関する合意、内-外集団の区別などを含むいくつかの条件が必須であることが明らかになった。平成22年度はこれらの理論的知見を、実験により検証する予定である。
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