研究領域 | 実験社会科学 |
研究課題/領域番号 |
19046008
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
巌佐 庸 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (70176535)
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研究分担者 |
青柳 真樹 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (50314430)
伊藤 秀史 一橋大学, 商学研究科, 教授 (80203165)
井上 達夫 東京大学, 法学政治学研究科, 教授 (30114383)
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キーワード | 批判的民主主義 / マルティブルセルフ理論 / 脳科学 / フレーム / 双曲線ルール / 制度改革 / 不完全情報 / ネットワーク材 |
研究概要 |
本研究計画の目的は、社会科学における実験手法の意義と役割について、個別領域を超えた鳥瞰的・メタ理論的な視点から検討することにあった。同時に、AO1,BO1に属する7つの計画研究班が生み出した具体的な実証知見を、社会科学あるいは自然科学の幅広い文脈に位置づけその意味を明らかにすると共に、個別研究に欠けていた視点を補い、さらなる研究展開を促すための批判装置として機能することを目指すものであった。 理論班は、一昨年と昨年にひきつづいて集団班との合同ワークショップを、2011年11月25日に、東京品川の会議室にて開催した。とくに集団班の公募研究者を中心として、脳科学と社会心理学や理論との交流を中心に議論をすすめた。それらに加えそれぞれの班員が他の班との共同研究をすすめている。 伊藤は昨年度末に大阪大学万博オフィスで開催された班長会議において、マルティブルセルフ理論にもとづいた意思決定の理解モデルを総説し感銘を与えた。社会心理学実験や実験社会科学の実験で明らかになってきたように、フレームのシフトによって行動選択が切り替わる状況を統一的に捉えることができる新しい枠組みを提案する可能性を示唆するものである。 また巌佐は、行動選択のルールとしてこれまで採用されてきているベストレスポンスやquantal response equilibriumでは理解できないことを示し、効用に関わらずランダムに行動をとる小さな確率(誤り)や、次善の行為をQREによる予測よりも大きな確率で採るとする双曲線ルールを提案し、それによって処罰レベルがそのもたらす害とともに増大することの説明をした。 井上は制度改革の試行錯誤的発掘を促進する民主主義モデルの理論的基礎を深め、現代日本の政治変革についてその意義を論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特定領域が全体としてまとめの1年に入りつつある時点で、理論班が多数の班の結果を総合的に理解する視点を与える役割は大きい。班員はそれぞれに新しいアイデアを出して成果をあげている。
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今後の研究の推進方策 |
青柳教授が実験を遂行し、また市場班との共同研究も進んでいるので、市場班と理論班との行動会議を計画したが年度内には時間的に不可能なことが分かったので次年度の初頭に大阪大学にて行う予定である。 巌佐は、とくに人間性のモデルとしての、ある種の非合理性や向社会性、誤りなどを取り込んだ行動選択ルールと、それにもとづいた制度の関連を追求することにより、異なる分野で見られている行動を統一的に理解する。
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