研究概要 |
本年度は,スピン偏極率が100%となることが理論的に予測されているハーフメタル系ホイスラー合金のCo_2MnSiおよびCo_2MnGe薄膜のハーフメタル特性に対する,化学量論的組成からのずれの影響を実験的に調べ,以下の知見を明らかにした. (1)Co_2Mn_αSi電極を用いたエピタキシャル構造のCo_2Mn_αSi/MgO/Co_2Mn_αSi磁気トンネル接合(MTJ)のトンネル磁気抵抗比(TMR比)のMn組成αに対する依存性を実験的に調べた.TMR比は低温4.2Kにおいても,また,室温においても,Mn組成をMn不足側(α<1)からMn過剰側(α>1)のある値まで増加させると共に,増加することが分かった.この結果として,Mn過剰側のα=1.29(Co_2Mn_<1.29>Si)において,4.2Kで1135%,室温で236%の高いTMR比を実証した. (2)Co_2MnGeについても同様の結果を得た.すなわち,Ge不足側の組成比を有するCo_2Mn_βGe_<0.38>電極におけるMn組成βの値を系統的に変えて作製したエピタキシャル構造のCo_2Mn_βGe_<0.38>/MgO/Co_2Mn_βGe_<0.38> MTJについても同様に,Mn過剰側のβ=1.40(Co_2Mn_<1.40>Ge_<0.38>)において,4.2Kで650%,室温で220%の高いTMR比を実証した. (3)これらの結果は,ハーフメタル特性を損なうと理論的に指摘されていたCo_<Mn>アンチサイト(MnサイトをCo原子が占める欠陥)の発生がMn過剰の組成にすることによって抑制されるためとして理解された.すなわち,Mh過剰の組成比に設定することによって,ハーフメタル特性の阻害要因となるCo_<Mn>アンチサイトを抑制できることを明らかにした.
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