研究概要 |
非磁性金属または半導体ヘスピン偏極電流を注入するための高効率スピン源を理論設計することを目標として、(1)ホイスラー合金/MgO接合における高スピン偏極界面の探索、(2)垂直磁気FePt/MgO/FePt(001)接合のトンネル磁気抵抗(TMR)比向上の検討、(3)一次元Fe鎖の磁気異方性に及ぼす電界効果の評価を行った。 ハーフメタルと酸化物の接合界面に形成される電子状態を介したスピン反転トンネル過程が、温度上昇に伴うTMR特性劣化の要因と考えられる。そこでホイスラー合金/MgO接合界面の電子状態を計算した結果、CrAl終端Co_2CrAl/MgO(100)接合では界面電子状態が形成されないことを見出した。界面のCr磁気モーメントがCo_2CrAlバルクより約70%も増大していることが、界面における高スピン偏極率の保持と関係している。 垂直磁気異方性を有するFePt/MgO/FePt(001)接合界面にFe原子層を挿入することにより、TMR比向上の可能性を検討した。膜厚の異なるFe原子層をMgO障壁の両側界面に挿入した場合のスピン依存伝導を計算したところ, 3〜4原子層のFe原子層挿入によりFe/MgOIFe(001)接合と同程度の1000%を超える巨大なTMR比が得られた。 電界による磁気異方性制御の可能性を理論的に検証するために、有効遮蔽媒質(完全導体極板)と一次元Fe鎖からなる系における磁気異方性の電界効果を評価した結果、磁気異方性エネルギーは電界に比例して変化することを見出した。電界によるs軌道電子の分布の変化と、s軌道とよく混成する3z^2-r^2軌道準位の変化が、磁気異方性に大きな影響を及ぼすことを明らかにした。
|