研究概要 |
1.高品位薄膜およびトンネル接合の作製 規則構造であるL2_1構造を有するCo_2MnSi薄膜,およびこれを電極としMgOを絶縁層としたエピタキシャル成長トンネル接合を作製した.スパッタ条件,基板温度,熱処理温度を系統的に検討した結果,低温で753%,室温で217%の磁気抵抗比を得た.また,強磁性共鳴によりスピンコヒーレンス長を測定するために,強磁性体の材料をFeCo合金,FeNi合金,ホイスラー合金で組成を系統的に変化させた薄膜,非磁性体をスピン拡散長の長いCuとした多層膜を超高真空スパッタにより作製した. 2.ポンププローブ法によるスピンダイナミクス検出装置の構築 ポンププローブ法を用いて,ピコセカンド領域のスピンダイナミクスを検出するための光学系を構築した.基本的なレーザーシステムは申請者がこれまで行ってきた研究で使用したものを用い,本研究用に光路の改良,検出装置の改良を行った.これらの結果,ピコセカンド領域においてレーザー照射後の磁化の減少に伴うカー効果信号の急激な減少,および磁化の回復に伴うスピンの才差運動の検出に成功した. 3.強磁性共鳴によるスピン流の生成と磁気緩和 強磁性共鳴を用いて強磁性からスピン流を生成し,非磁性体内を伝搬した後にもう一方の強磁性内で緩和する過程を調べた.強磁性の膜厚を0-20nmの範囲で変化させて,強磁性共鳴の共鳴線幅の変化を解析した.強磁性共鳴からのスピン流は磁化の方向に対する横成分が主であることから,強磁性体内の横スピン侵入長を見積もることに成功した.CoFeB, Co, CoFe, FeNiにおけるスピン侵入長は12nm,1.7nm,2.5nm,3.7nmであることがわかった.
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