研究概要 |
本研究では、半導体量子構造における光⇔スピン流変換を基礎とし、半導体デバイスの基本原理(電界制御,発光・受光)を駆使して核スピンの量子位相の制御・検出を光学的手法により実証することを目的とする。具体的には、(1)光による核スピン制御・検出が可能となる半導体量子ナノ構造デバイスの作製と、(2)核スピンの量子コヒーレンスを制御し、スピン流を介した光と核スピン間の相互作用の制御及び量子スピントロニクスデバイス基盤技術を確立することである。得られた成果は以下の通りである。 (1)半導体量子ナノ構造デバイスの設計と作製 高移動度2次元電子におけるスピン流生成とその観測を行うため、今年度は高移動度GaAs/AlGaAs単一量子井戸構造を作製し、電子線描画によって量子ポイントコンタクトを作製し量子化コンダクタンスを確認した。 (2)高空間分解能時間分解顕微分光システムによるスピンホール効果の定量的測定 スピンホール効果と光注入によって生成されるそれぞれのスピン蓄積量を比較・解析することによってスピンホール導電率σ^<SH>を実験的に決定し、n型GaAsにおける外因性スピンホール効果の電子濃度n依存性について調べた結果、σ^<SH>はnに対して増加し、電界(5~20mV/μm)に対して一定であることを明らかにした。また、理論モデルと比較してσ^<SH>の計算結果が実験結果を定量的に良く説明できることを示した。 (3)量子情報操作に関する検討 n型(110)GaAs/AlGaAs単一量子井戸をチャネル層とする電界効果トランジスタ構造において、核スピンのエネルギー緩和時間と位相緩和時間の電子密度依存性を時間分解カー回転測定による光検出NMR測定より調べ、前者は10倍以上,後者も2倍近く電子密度変調により制御可能であることを実証した。
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