研究概要 |
本研究では、半導体量子構造における光⇔スピン流変換を基礎とし,半導体デバイスの基本原理(電界制御,発光・受光)を駆使して核スピンの量子位相の制御・検出を光学的手法により実証することを目的とする.具体的には,(1)光による核スピン制御・検出が可能となる半導体量子ナノ構造デバイスの作製と,(2)核スピンの量子コヒーレンスを制御し,スピン流を介した光と核スピン間の相互作用の制御及び量子スピントロニクスデバイス基盤技術を確立することである.得られた成果は以下の通りである. (1)n型GaAs(110)量子井戸構造について,超微細相互作用と四重極相互作用の大きさを変化させたときの核スピン緩和時間を光検出核磁気共鳴により測定し,それらの影響を定量的に評価した.磁場印加方向を変化させて核磁気共鳴スペクトルを測定・解析することにより,四重極相互作用がコヒーレンスを乱す原因になることを示すとともに,内部電場勾配を見積もった.さらに外部から機械的に加えた歪によって四重極相互作用を増大させると不均一拡がりが増大することが示された. (2)局所的な核スピン操作に有望な核電気共鳴を実証した.核四重極相互作用は歪に加え,電界によって制御できることが知られている.本研究では,まず電界によって核磁気共鳴スペクトルの共鳴周波数を線幅以上に変化させられることを実証した.さらに,振動電界によるコヒーレントな核スピン操作を試み,パルス電界によるラビ振動が観測され,はじめて電界による核スピンのコヒーレント操作を実証した.この手法は,振動磁場を用いず,電界のみでスピン操作することが可能であり,局所的な核スピン操作に応用できることから,将来の量子スピントロニクスデバイスへの応用が期待される.
|