研究概要 |
「スピン流と光物性」班では、光とスピンとの相関によって生じるさまざまな物理現象を探求し、光によるスピン流制御を推し進めてデバイス応用可能な機能発現を目指しており、 (1)半導体量子構造における核スピンの光制御・検出,(2)強磁性半導体における光磁化の解明と制御,(3)金属多層膜系におけるスピン流と磁気緩和の光学的検出,(4)光・電子スピン結合の理論,の課題について研究を実施している.以下に本年度の「スピン流と光物性」に関する成果を記す. (1)局所的な核スピン操作に有望な核電気共鳴を実証した.電界によって核磁気共鳴スペクトルの共鳴周波数を線幅以上に変化させられることを実証し,さらに振動電界によるコヒーレントな核スピン操作を試み,パルス電界によるラビ振動が観測され,初めて電界による核スピンのコヒーレント操作を実証した. (2)Fe/(Ga,Mn)As構造における巨大磁化ダンピングに絞って研究を進めた。当初想定していなった新現象の発見を含む非常に多くの知見を得ることができた。具体的には、両層の磁化の相対配置に依存して磁化の才差運動、すなわち、光生成角運動量の流れ(スピン流)の減衰が大きく変化する現象を世界に先駆けて見出した。 (3)強磁性金属に対しパルスレーザー光を照射した際にサブピコ秒領域で発生する減磁現象について、ホイスラー合金を中心に調べた。Mn-Ga合金並びにCo系垂直磁化膜の超高速減磁時間τは励起レーザー強度Pに対し増大する傾向を示し、微視的な理論と傾向が一致した。他方、AgやCr下地上に積層したCo2MnSiホイスラー合金のτはPに対し減少する傾向を示した。 (4)Auで見出されている巨大スピンホール効果の起源について、前川グループと共同で研究を行った。第一原理計算と量子モンテカルロ法を組み合わせることで、FeとPtが不純物として入った時にどのような軌道依存近藤効果を示すかを調べ、両者がどのような条件下で巨大なスピンホール角を与えるかを明らかにした。
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