研究概要 |
平成20年度は以下の二項目について研究を行った。 1. MnSbハイブリッド光アイソレータの低伝搬損失化に関する研究を行った。上部クラッド層の膜厚を従来の300nmから500,700nmとすることによって伝搬損失の低減を試みた。上部クラッド層厚が300nmの時には20-30dBであった伝搬損失がクラッド層厚が500nmのときには7.5-8.5dB、クラッド層厚が700nmの時には5-5.5dBに低減することが明らかになった。素子は利得導波型である。伝搬損失が低減された素子においても5.6dB/mmの光アイソレーションが観測された。これまでの研究によって利得導波型から屈折率導波型に導波路構造を改良することによって18dBの伝搬損失の改善が見込まれており、伝搬損失をゼロにする素子構造の実現にめどがついた。 2. ハイブリッド光アイソレータへ応用する強磁性体は吸収損失が小さく、磁気光学効果が大きい材料が好まれる。当該領域内で共同研究を行い、スパッタ製膜Co添加TiO_2薄膜の磁気光学特性の評価を行った。Co添加TiO_2薄膜の「キャリア濃度が約10^<21>cm^<-3>と高く、電極として利用でき」、「室温を上回る温度で強磁性を示し」、「スパッタ製膜試料で大きな磁気光学効果が得られている」性質に着目した。スパッタ製膜のCo添加TiO_2薄膜(Co濃度5%,10%)の波長400nmから1600nmまでの透過率とファラデー回転角、ファラデー楕円率を評価し、磁気光学性能指数を算出した。ファラデー楕円率[deg./cm]を透過損失[dB/cm]で割った磁気光学性能指数[deg./dB]で評価するとCo添加TiO_2薄膜(Co濃度10%)は可視光の波長578nmで最大を示し、同じ波長におけるCo薄膜の性能指数を上回った。波長400-750nmといった可視光でハイブリッド光アイソレータを作製する場合、Co添加TiO_2薄膜はCo薄膜より磁気光学材料として適していることが明らかになった。これらの研究によってCo添加TiO_2薄膜の光スピントロニクスデバイス応用の可能性を示すことができた。
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