研究概要 |
・強磁性半導体GaMnAsにおけるフェルミ準位の位置とバンド構造を系統的に解明 高精度のエッチング手法と共鳴トンネル分光法を組み合わせたユニークな方法を開発し、様々な強磁性半導体GaMnAs試料において、フェルミ準位の位置とバンド構造を系統的に明らかにすることに成功した。特にGaMnAsのフェルミ準位の位置は、これらの材料系における強磁性発現機構を理解する上で極めて重要であり、その解明が切望されてきた。得られた結果は、今まで10年以上にわたって一般的に受け入れられてきたこれらの系のバンド構造の理解とは大きく異なっており、今後これらの材料系の研究を進める上で、また、これらの材料系を用いた次世代スピントロニクス素子を実現する上で、重要な指針になると期待される。 ・MnAs金属ナノ微粒子で長いスピン緩和時間を観測 GaAs半導体マトリックス中に分散する六方晶の結晶構造をもつ強磁性金属MnAsナノ微粒子(直径~5nm)を含む単電子スピントランジスタ構造を作製し、微粒子における極めて長いスピン緩和時間(10μs)(μs=マイクロ秒)を観測した。この値はこれまで報告された金属ナノ微粒子のスピン緩和時間として最も長く、最近報告されたCo微粒子のスピン緩和時間より2桁(約100倍)、バルク金属と比べると7桁(約10,000,000倍)も長い値である。この成果は、強磁性微粒子の超高密度スピンメモリや再構成可能なスピントランジスタ等、次世代のスピントロニクス・デバイスへの応用につながると期待される。 ・その他、強磁性MnAsをソースドレインとするスピンMOSFETを作製し、スピン依存伝導の観測、均一なMn組成をもつIV族強磁性半導体GeMnの作製に成功した、などの成果を挙げた。
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