強磁性MnSb層をスピン注入電極とするスピン発光ダイオードを試作し、円偏光度数%で発光する素子(低温、40K以下)を面直発光型ならびに端面発光型の両者で得ることに成功した。分子線エピタキシー(MBE)装置1号機でGaAs-based light emitting diode(LED)構造を基板温度T_s=510℃で作製し、引き続き、MBE1号機からMBE2号機に真空搬入し、T_s=250℃でスピン注入電極層の強磁性MnSbエピタキシャル薄膜を作製した。MBE2号機より取り出したウェーバは、通常の金電極形成・光露光・ウェットエッチングにより、直径250ミクロンのメサ構造に加工した。試料に約1V以上の電圧を印加すると金電極周辺がエレクトロルミネッセンスにより発光する。発光帯のピークは、1.51eVであり、期待どおりGaAsバンド端からの発光過程が支配であった。端面発光型素子の場合、作製したウェーハを結晶面(100)でへき開して切り出して作製する。GaAs発光層の厚は150nmである。金電極形成とメサエッチングは行わない。発光スペクトルは、おおむね、面直発光素子と同じであった。発光帯ピークで計測した円偏光度の磁場依存性はMnSb層の面内磁化ヒステリシス曲線とほぼ一致した。すなわち、MnSb層からのスピン偏極電子がGaAs発光層に注入されていることが証明された。さらに重要なことは、外部磁場ゼロでも、面内の残留磁化を反映して、円偏光が残留する状態を得ることができた。本年度の結論として、面直発光素子・面内発光素子ともに、強磁性体の残留磁化を積極的に活用した円偏光発光を実現することができた。すなわち、素子駆動中に外部磁場を印加する必要がない素子が作製可能であるということを示すことに成功した。
|