本年度は、研究実施計画に基づき、1.逆スピンホール効果を用いたPt/GaAs複合構造における光誘起スピンポンピングの検出、2.マイクロ波誘起スピンポンピングの物質依存性を系統的に調べた。 1.Pt/GaAs複合構造における光誘起逆スピンホール効果 Pt/GaAs複合構造において光誘起逆スピンホール効果の検出に成功した。これにより逆スピンホール効果を用いることで、電子スピンだけでなく、光スピンを電気信号に変換することが可能であることを明らかにした。本現象を多層膜における光伝播解析手法に基づいて定式化し、光誘起逆スピンホール効果が光スピン情報-電気信号の直接変換を実現することを見出した。Pt/GaAs複合構造においてこれを実証し、スピンフォトディテクターとしての機能を示した。光誘起逆スピンホール効果は光スピン・スピン流・電流の相互作用を実現する希有な現象であるだけでなく、光スピン情報に基づく光スピントロニクスにおいて本質的役割を果たすことが期待される。 2.Ni-Fe合金に着目し、強磁性/Pt接合におけるマイクロ波誘起スピンポンピングの物質依存性を逆スピンホール効果により調べた結果、組成比に関する系統的理解が得られた。実験結果は現象論的モデル計算で再現され、スピンポンピングにより生成されるスピン流は磁化歳差運動の立体角で決定されることを見出した。本結果はスピン流一磁化ダイナミクス相関の基本原理であるだけでなく、磁化ダイナミクスによるスピン流注入の最適化に明確な指針を与える物である。
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