研究概要 |
我々は,スピントロニクスとシリコンテクノロジーとの融合を推進するため,シリコンベース素子を用いたスピン注入効率の最適化に焦点を絞り, (1)シリコンベース強磁性体の開発 (2)強磁性体金属/シリコンヘテロ構造におけるスピン偏極電子注入の実証 (3)スピン流を用いたシリコンベースデバイス機能の実証 を目指して研究を行っている.平成19年度は,(1)と(2)に関して実験を行った. (1)シリコンベース強磁性体の開発: イオン注入によってシリコンベース強磁性半導体の合成を目指した.注目した材料は,炭化シリコン(4H-,3C-SiC)である.この系では,理論的に強磁性体になる可能性が指摘されている.熱拡散法,あるいはイオン注入法によって磁性元素Mnの導入を試みた.現在のところ,4H-SiCでは,Mhが格子間位置に入ってしまい,強磁性シグナルの観測には至っていない.一方,3C-SiCにおいては,SiをMnが置換している可能性を示す実験結果が得られているものの,その3C-(Si,Mn)Cが強磁性を示しているか否かに関しては確証に至っていない. (2)Fe_3Si/CaF_2/Siヘテロ構造の開発: 本研究開始以前は,Fe_3Si表面の凹凸を抑えることが出来なかったが,Fe_3Si層の形成を低温MBEで行い,その後,250℃で熱アニールすることによって,平坦なFe_3Si膜の成膜が可能になった.また,このヘテロ界面を積層したエピタキシャル磁気トンネル接合を作製できるようになった.磁化曲線にもステップが観察されている.さらに本年度は,Fe_3SiとCaF_2の選択エッチングレシピを開発した.また,同様にFe-N系強磁性体を用いた磁気トンネル接合の作製にも着手した。
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