研究領域 | スピン流の創出と制御 |
研究課題/領域番号 |
19048030
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
秋永 広幸 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノテクノロジー研究部門, 研究グループ長 (90221712)
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研究分担者 |
末益 崇 国立大学法人筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 准教授 (40282339)
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キーワード | MBE, エピタキシャル / 磁性 / スピンエレクトロニクス / ナノ材料 / 半導体物性 |
研究概要 |
我々は、スピントロニクスとシリコンテクノロジーとの融合を推進するため、シリコンベース素子を用いたスピン注入効率の最適化に焦点を絞り、(1)シリコンベース強磁性体の開発(2)強磁性体金属/シリコンヘテロ構造におけるスピン偏極電子注入の実証(3)スピン流を用いたシリフンベースデバイス機能の実証 を目指して研究を行っている。平成20年度は(1)と(2)、主に(2)に関して実験を行った。 本研究開始以前はFe_3Si表面の凹凸を抑えることが出来なかったが、Fe_3Si層の形成を低温MBEで行い、その後、250℃で熱アニールすることにより、平坦なFe_3Si膜の成膜が可能になることを平成19年度までに報告した。また、このヘテロ界面を積層したエピタキシャル磁気トンネル接合(Magnetic Tunnel Junction: MTJ)を作製できるようになった。そこで本年度は、スピンフィルターを目指したFe_3Si on CaF_2(5nm)/Fe_3Si(5nm)/CaF_2(5nm)共鳴トンネル構造を設計し、Si(111)基板にMBE法によりエピタキシャル成長した。M-Hカーブから上下強磁性層の保磁力の差によるステップを観察している。共鳴トンネル構造の作製に成功したことから、計画が前倒しに進行し、微分負性抵抗(NDR)の観察にも室温で成功した。NDRが現れる電圧間隔は約2Vであった。この値は、量子井戸内部のフェルミ準位より高いエネルギーにある量子化準位間のエネルギー間隔(約1ev)の2倍になっており、2つの障壁層に均等に電圧が印加されたとして、定量的に説明できる。また、昨年度から開始しているFe-N系強磁性体を用いた磁気トンネル接合の作製においては、MBE法により、MgO(001)基板へのFe_4N膜のエピタキシャル成長を実現するとともに、a軸に高配向したFe_4N(100nm)/MgO(2nm)/Fe_4N(30nm)MTJ構造のMBE成長に成功した。
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