本研究課題では、スピンエレクトロニクスとシリコンテクノロジーとの融合を推進するため、シリコンベース素子を用いたスピン注入効率の最適化に焦点を絞り、(1)シリコンベース強磁性体の開発、(2)強磁性体金属/シリコンへテロ構造におけるスピン偏極電子注入の実証、(3)スピン流を用いたシリコンベースデバイス機能の実証、を行う。スピンエレクトロニクスをシリコンベース半導体テクノロジーに適用し、さらにプロトタイプデバイスを作製することによってその技術的課題を抽出しようとする試みは現在ま研究計画である。より具体的には、(1)シリコンあるいはシリコンカーバイドなどIV族半導体に遷移金属をドーピングする技術を開発し、それらIV族半導体そのものをスピン偏極電子源とする。(2)強磁性体金属とシリコンとの界面に絶縁体薄膜を導入する技術を開発し、熱的に安定なMIS接合を作製するとともに、トンネル現象を用いたスピン偏極電子注入を実現する。(3)(2)番にて開発したMIS接合を用いて、そのスピン注入効率を最大・最適化するとともに、シリコンベーススピン発光素子等に適用し、素子特性に与えるスピン依存現象の解析と技術的課題の抽出を行う。これらを通じて、beyondCMOS世代を担うナノエレクトロニクス研究開発の種と、強磁性体金属からなる各種ストレージデバイスの微細化を進める上で必要不可欠なシリコンベース半導体素子との接合に関する学理・技術に関する現実的知見を得ることを目指す。
|