研究概要 |
本年度は、高い光電場増強を示す金属ナノ構造体の設計指針を明らかにすることに主眼を置いて研究を行った。昨年度の研究では、化学増幅型のネガ型フォトレジストを用いて、金ナノ構造上の光重合反応パターンを観察することにより、金属ナノ構造に局在する光電場強度分布について明らかにした。しかし、本方法では重合開始剤の分子拡散が、形成される重合体の空間パターンに及ぼす影響について考慮しなければならず、また電子顕微鏡による観察の関係上、金ナノ構造体上の生成物量を定量的に見積もることが困難であった。そのような観点から、本年度はナノギャップを有する金2量体構造を、ポジ型フォトレジストをコートしたガラス基板に密着させて転写露光を行い(フェムト秒レーザー光を任意の強度.時間照射)、形成される光化学反応パターンを現像後、電子顕微鏡、或いは原子間力顕微鏡により観察を行った。ナノギャップ金構造体に対して平行な偏光レーザービーム条件では、ナノギャップの位置にのみ空間選択的に2光子光反応により直径10〜20nmのレジストのナノパターンが光照射領域全体に形成されることが明らかになった(レーザー光強度 : 50W/cm^2,パルス幅 : 100fs,繰り返し周波数 : 82MHz,照射時間 : 10s)。また、プラズモンの共鳴波長や光照射時間を制御することによって、形成されるレジストの空間パターンが変化することを明らかにするとともに、形成された空間パターンが光電場強度分布の数値解析結果と良い一致を示すことを明らかにした。これらの結果から、ナノメートルの空間にのみ選択的に光化学反応を誘起することが可能であること、そして金属ナノ構造の設計次第では形成されるナノパターンのサイズ、形状、或いは空間分布を任意に制御することが可能であることを実験的に明らかにすることに成功した。
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