本研究では、局在プラズモンによる空間的光捕集(光アンテナ効果)と微小共振器による時間的光捕捉(群速度抑制効果)を相補的に組み合わせることにより、光子と分子の究極的な結合状態、すなわち光子1個と分子1個が100%相互作用する系の実現を目指した研究を行った。この目的に対し、超狭帯域レーザー顕微分光イメージング装置を用いて、(a)テーパファイバ結合微小球を用いた高効率局在プラズモン励起、および、(b)散乱型近接場顕微鏡を用いた光局在場の高空間分解マッピングの実現を行った。その結果、微小共振器構造を利用した高効率局在プラズモン励起では、テーパファイバ結合微小球共振器の高入出力結合および高Q値等の特性により、テーパファイバ結合微小球共振器に近接させた金コートAFMチップの微小球-AFMチップ間距離の最適化により、約93%もの入射光が金コートAFMチップ先端において光が散乱・吸収される事を示し、金コートAFMチップ先端部において高強度の局在プラズモン励起の可能性を示唆した。また、散乱型近接場顕微鏡を用いた光局在場の直接観察では、電子線リソグラフィ/リフトオフにより精度良く作製したナノギャップ(約7 nm)金ナノ構造体の散乱場および試料の凹凸像の同時測定を行い、回折限界を遥かに越えた(半値全幅9.2±0.5 nm~λ/100)微小光局在スポットの観測に成功した。これまで数値計算あるいは散乱スペクトル等の間接的な情報から推測するしか無かった局在場の空間分布を実験的に初めて示す事に成功した。
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