光一分子強結合反応場の構築は、弱い光あるいは低エネルギーの光を用いた光化学反応の高効率化や新奇反応の開拓が可能となる。ボトムアップ法により創出される精緻なナノ粒子およびその超格子を用いることにより、プラズモン誘起光電場増強による二光子励起や光電子移動反応を利用した新奇光化学反応の開拓が可能になると期待される。本年度は、超格子の粒子間距離短縮を目的とした大環状π共役配位子の合成、ならびに、構成単位となるAuナノ粒子の粒径制御を行った。Auナノ粒子超格子の粒子間距離短縮のために、含硫黄官能基を複数有する多座配位型ポルフィリンならびにフタロシアニン誘導体配位子の合成を行い、Auナノ粒子表面に対しπ共役環状部位を平行に配位させることにより、配位子層厚を極めて薄くすることができた。次に、低耐熱性の低分子量有機配位子を用いたAuナノ粒子の粒径制御を実現するため、2nm程度のアルカンチオール保護Auナノ粒子の酸処理による室温粒径成長について検討した。酸性度の異なるブレンステッド酸を用いることにより、配位子の脱着および粒子の融合が促進され、2〜7nmの範囲でAuナノ粒子の精密粒径制御に成功した。さらに、光電場増強効果の大きい20nm以上の高品質金属Auナノ構造体の合成を目指し、種々の鎖状高分子存在下、塩化金(III)酸をエチレングリコール中235℃にて還元したところ、Au(III)イオンは非常に緩やかに還元され、平均粒径40 nm程度の八面体Auナノ構造体が得られた。また、得られた八面体Auナノ構造体の(111)面にAg原子を選択的に析出させることで、Au/Agコアシェル型の立方体ナノ構造体(一辺100nm)を合成することに成功した。これら八面体および立方体プラズモン金属ナノ構造体は可視一近赤外領域に大きな表面プラズモン共鳴吸収を有しており、特に頂点部分で大きな光電場増強場を発現するものと考えられる。
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