光-分子強結合反応場の構築は、弱い光あるいは低エネルギーの光を用いた光化学反応の高効率化や新奇反応の開拓が可能となる。ボトムアップ法により創出される精緻なナノ粒子およびその超格子を用いることにより、プラズモン誘起光電場増強による二光子励起や光電子移動反応を利用した新奇光化学反応の開拓が可能になると期待される。本年度は、紫外および近赤外領域に表面プラズモン共鳴(SPR)吸収を示す正二十面体Pdおよび酸化インジウムスズ(ITO)ナノ粒子の一次(粒径、形状、組成)構造をナノスケールで精密制御することにより、紫外および近赤外領域でのSPR波長制御について検討した。光電場増強効果の大きい20nm以上の高品質金属ナノ構造体の合成を目指し、種々の鎖状高分子存在下、塩化パラジウム(II)酸ナトリウムをエチレングリコール中で還元したところ、平均粒径数十nmの正二十面体Pdナノ粒子が得られ、粒径の増大(15→42nm)に伴い、SPR波長が250nmまで長波長シフトすることが明らかになった。また、SPR波長が物質の電荷密度に依存することに着目し、元来電荷密度が金属より2桁小さいITOナノ粒子の電荷密度を、Snドープ量および酸素欠陥量で制御することにより、そのSPR吸収波長を1600nm以上の近赤外領域で精密に制御することに成功した。次に、プラズモン金属ナノ粒子ダイマーにおける一般的なプラズモンカップリング現象を理解するため、高品質正八面体Auナノ粒子ダイマーのプラズモンカップリングモードの粒子間距離依存性について詳細に検討した。その結果、ダイマー軸に対するTM偏光の入射方向により、二種類の双極子モードを誘起することができ、in-phase(antibonding、"bright" plasmon)およびanti-phase(bonding、"dark" plasmon)モードは粒子間距離の短縮に伴い、それぞれ短波長、長波長シフトすることを直接観察することに世界で初めて成功した。
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