ITO電極上に担持した金ナノ粒子と酸化チタンからなる積層構造材料(ITO/TiO2/AuまたはITO/Au/TiO2)が示すプラズモン誘起光電変換の詳細な機構解明を目指し、さまざまな形状の金ナノ粒子またはナノ構造をITO電極上に電析させ、表面プラズモン共鳴特性との相関について調べた。電析電位を-0.5Vから0.0Vへとシフトさせることで球状金粒子のサイズの増大や金平糖状粒子の生成を生じ、それにより共鳴波長がレッドシフトした。また0.0Vでの長時間の電析により樹状の金ナノ構造が形成され、可視域から近赤外域において強い吸収を示すことを明らかにした。これにより近赤外域でのプラズモン共鳴誘起光電変換を検討できる。 ITO/Au/TiO2系における光電変換では、金ナノ粒子上の励起電子がITOにも移動する可能性があり、ITOを用いない系の構築により光電変換効率の向上を図った。ガラス基板上に10-30nmの金ナノ粒子を真空蒸着することで、プラズモン共鳴を示す半透明電極を作製することに成功した。この電極をTiO2で被覆した電極の光電変換特性は、ITO/Au/TiO2系と同程度であった。この結果は、金ナノ粒子からITO電極への電子移動パスが光電変換効率の低下には繋がらないことを示す。また、ITOを用いないことで系全体のコスト削減につながる。 銀ナノ粒子を担持したTiO2膜が示す多色フォトクロミズムは、これまでの検討から銀ナノ粒子のサイズや形状などのプラズモン共鳴誘起変化に由来した現象であることが明らかになっている。本機構に基づき、紫外光による銀ナノ粒子の析出時に任意の可視光を同時照射すると、銀ナノ粒子の光触媒還元析出とプラズモン共鳴誘起酸化溶解が同時に起こり、可視光波長に依存して粒子サイズと共鳴波長を任意に制御できることを明らかにした。さらに、金属ナノロッドが示す偏光特性に着目し、UV光と線形赤色偏光を同時照射すると、照射偏光方向と直角を成す方向に沿って選択的に銀ナノロッドが配向析出することを見出した。
|