我々は最近、プラズモン共鳴により光を吸収する貴金属ナノ粒子(NPs)を酸化チタンなどのn型半導体と組み合わせた系において、光誘起電荷分離が可能であることを見出した。この系は、NPの吸収断面積が大きく、またNPのモルフォロジーによって光学特性を制御できる、といった特徴がある。本研究では、この電荷分離の機構を解明し、光電変換、光触媒、多色フォトクロミズム、光電気化学アクチュエータなどへの応用を試みることを目的とした。 光電変換系では主にITO電極上に担持した金ナノ粒子と酸化チタンからなる積層構造材料(ITO/AuNP/TiO2)を用いてきたが、金ナノ粒子から酸化チタンに移動した電子がITOに戻るパスが効率を下げている可能性があるため、ITO上に絶縁性のアルミナナノマスクを形成し、そのナノボア内に金ナノ粒子を電解析出して、酸化チタンで被覆した。この場合、金ナノ粒子の量は減るが、サイズなどの分散を抑えることができ、熱による融合なども抑制できた。吸収あたりの光電流値も改善することができた。また、アルミナナノマスクを用いることで、熱による融合がより顕著であった銀ナノ粒子も使用できるようになった。また、銀ナノ粒子を用いた場合は1000nm以上、金ナノ粒子の場合は900nm以上の波長でも電荷分離が可能だと判明した。 一方で、酸化チタン上での銀ナノ粒子の光電気化学的挙動についても詳しく調べた。酸化チタン上に形成した垂直銀ナノプレートのプラズモン共鳴波長は可視光域にあるが、可視光の照射に伴う転倒によって、近赤外域にシフトすることを明らかにした。電界蒸着法により任意の形状・配置の銀ナノ粒子を形成する方法についても確立した。
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