金属粒子-半導体粒子を複合化すると、金属粒子の表面プラズモン励起による光電場増強場によって、半導体ナノ粒子の光励起が高効率で進行すると予想される。本研究では、半導体ナノ粒子を金属粒子と複合化させ、その光化学特性を詳細に検討した。 硫黄元素を含有する金属錯体を前駆体として用い、オレイルアミン中で熱処理(180℃)することにより、ZnS-AglnS_2固溶体ナノ粒子を調製した。XRD回折パターンから、得られたナノ粒子は正方晶系の結晶構造を持つZnS-AglnS_2固溶体粒子であり、Zn含有量の多い前駆体を用いることで、ZnSの組成割合が大きくなることがわかった。TEM観察により、固溶体粒子組成に関わらず、3〜6nmの幅広い粒径分布を有するナノ粒子が生成することがわかった。ナノ粒子はクロロホルムに均一に溶解し、固溶体粒子組成中のZnS含有量が減少するにつれ、吸収スペクトルの吸収端波長が540から720nmへと長波長側にシフトした。この溶液は紫外光照射により強く発光し、その発光色は固溶体粒子の組成に依存して変化し、発光量子収率は最大で24%に達した。 AglnS_2ナノ粒子の単粒子層をAuナノ粒子薄膜上に固定し、その発光特性に及ぼす膜構造の影響を評価した。この際、ポリジアリルジメチルアンモニウム/ポリスチレンスルホン酸(PDDA/PSS)層をスペーサーとして、AglnS_2粒子層とAu粒子層の間に積層した。(PDDA/PSS)層数が増加し、Au粒子とAglnS_2粒子との層間距離が大きくなるほど、AglnS_2粒子からの発光が増大した。また、スペーサー積層数が24層以上で、石英基板上に同様に固定したAglnS_2粒子の発光よりも強くなった。このことから、Auナノ粒子固定化薄膜は、光電場増強場として効果的に働き、近傍の半導体ナノ粒子の光励起効率を向上させることがわかった。
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