研究概要 |
19年度は以下の研究成果を得た。 1)金属ナノギャップ中分子の光学禁制遷移の可能性検討 金属ナノギャップ中で局在した電磁場下にタイマー分子が配置された場合の光学応答を計算し,ギャップより離れた場所では光学許容(双極子的)遷移のみが起こるのに対し,ナノギャップ近傍では光学禁制(非双極子)遷移が許容遷移と同程度の強度でおこる事が明らかになった。またその程度はナノギャップと分子タイマーの相対位置やタイマーの配向に敏感に依存する事を突き止めた。 2)高効率もつれ合い光子対生成の理論 相関光子対による化学反応を効率的に起こすために高効率にもつれ合い光子対が生成する機構を探り,共振器中に閉じ込められた光子と励起子分子が強く相互作用する場合に格段に効率が上昇する事を突き止めた。特にこの機構は半導体薄膜などを用いたデバイス実装を考える際に,効率を得るための有効な機構である事を示す事が出来た。 3)キラル分子の円偏光レーザーによる輻射力の理論 ポルフィリンタイマーを例にとり,エナンチオマーに対する左右円偏光の輻射力の差を理論的に評価し,常温による均一幅の増大や分子配向のランダムネスを考慮に入れても,輻射力によりエナンチオマー分離が可能である事を明らかにした。 4)円環状分子配列構造のエネルギー移動の理論 光合成アンテナ分子LH2の集合系におけるエネルギー移動効率を理論的に評価した。集合分子が分子間双極子相互作用でコヒーレントな励起状態を形成すると仮定した場合,円環状分子間の相互作用が大きく,状態密度が広いエネルギー領域に広がる状態ほど,効率的にエネルギー移動を起こす事を明らかにした。
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