研究概要 |
(1)光電磁場, 物質波動関数双方の空間構造のインタープレイを考慮し、金属ナノギャップ近辺に配置された分子ダイマーの光学応答を調べた。結果として、ナノギャップ周辺での分子からの散乱光強度を見た場合、ナノギャップ近辺の増強電場から離れた場所では許容遷移による散乱電磁場強度に比べて禁制遷移のそれは無視できるのに対し、ナノギャップ近傍にある場合には両方が同程度の寄与を示すことなどが明らかになった。 (2)赤色光合成細菌中に存在し、エネルギーの捕集と伝達を担う田2(辺縁アンテナ)間の励起エネルギー移動の機構を、局在光電磁場による励起の観点から調べた。その結果、B850ringの各準位の間で、エネルギー移動に対する寄与に大きな差があることを見出した。従来、エネルギー移動は輻射寿命が長いと考えられている最低励起状態(禁制準位)を介して起こるという推測や、最もトランスファーが強い準位(許容準位)が支配的であるという説などがあるが、準位間の緩和や、準位内での位相緩和等を考慮に入れた場合、これらの両方が有意な寄与をなす可能性を示唆する結果が得られた。 (3)分子の共鳴光学応答を利用した輻射力による分子運動制御に関連して以下の成果が得られた。[1]キラル分子に対する円偏光照射によりエナンチオマーを選択的に運動制御可能であることが分かった。ポルフィリン分子やらせん状分子に対する計算を行い、非接触な運動制御であることを活かした応答の積算効果による有意な選択制御の可能性を示すことが出来た。[2]カーボンナノチューブの励起子準位に共鳴する光が誘起する輻射力により室温条件下でも極めて有意にサイズ選択的なトラップが可能であることを示した。[3]共鳴進行波中での力学的多粒子相関を検討した結果、多粒子系の分極相関を制御することによって負の散逸力が発生することを明らかにした。
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