研究概要 |
(1) 光電磁場,物質波動関数双方の空間構造のインタープレイを考慮し、金属ナノギャップ近辺に配置された分子会合体の光学応答を調べた。会合体は通常の光学許容モードの他、光学禁制なモードを有するが、ナノギャップ近辺では配置の条件により全てのモードが同程度の大きさで励起されることが分かった。さらにこれらのモードを、周波数毎に適当に位相を制御されたパルスで励起すればサイト選択的な励起が可能であることが明らかになった。これはナノギャッププラズモンによる光局在化をさらに越えた局所励起が可能であることを示している。また、ナノギャップモードよりスペクトル幅が狭い分子とギャップモードが相互作用した際、金属での吸収が抑制され、ほとんどのエネルギーが分子に凝集する条件があることが分かった。これは金属アンテナでの散逸を抑えて高効率なエネルギー利用を行うための新たなデバイス構造設計に示唆を与える結果である。 (2) 赤色光合成細菌中に存在し、エネルギーの捕集と伝達を担うLH2(辺縁アンテナ)間の励起エネルギー移動の機構を、局在光電磁場による励起の観点から調べている。21年度は、その円環構造が、生態系における揺らぎを前提にしたときに孤立した色素分子が配置されるより圧倒的にエネルギ移動効率において有利であることが明らかになった。特に孤立した色素分子系の場合にはエネルギー移動に対して「不規則性による遮閉効果」が存在することが分かり、円環構造を形成することに依る等方性の獲得とキャリア数の抑制が「不規則性による遮閉効果」を回避する上で重要な要素であることが明らかになった。 (3) 分子軌道計算による波動関数を用いてナノギャップ近傍での単分子に働く輻射力を評価した結果、禁制準位、許容準位共に、それぞれの波動関数の空間構造に応じた配向選択的な力を生み出すことが分かった。
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