研究概要 |
本特定領域研究では、配列ナノ空間を有する物質群の伝導・磁気物性を研究している。H20年度では、IV族元素(C, Si, Ge)を構成要素として形成されるナノ配列空間を有する多面体ネットワーク物質の単結晶育成を主体として研究を進展させた。その結果、p, n両方のキャリヤを制御した単結晶育成にBa_8Ga_<16>Ge_<30>系の試料で成功した。一方、Sr_8Ga_<16>Ge_<30>系に関しては、n型の試料だけが単結晶として得られた。この原因をX線回折による構造の結果をもとにして議論することができた。これらの高品質の試料を用いて光電子分光の結果と電気伝導の結果を総合的に解釈した。多面体をネットワークとして組み合わせてできる固体は配列ナノ空間を有し、その配列ナノ空間の中にアルカリ金属元素(Na, K, Rb, Cs)、アルカリ土類金属元素(Sr, Ba)、磁性元素Euなど種々の元素を導入することができる。その結果として伝導ならびに磁性に極めて興味深い電子物性を発現する事が知られている。これらのクラスタからなるネットワーク固体の物性は、これまで個々には研究されてきたが、まだ現在のとろろ断片的な理解しか達成されていない。そこで、物性と構造との関係を総合的に理解する目的のために、ホール測定まで含めて様々な物質の物性を高精度に測定する一方、比熱の時間依存を正確に測定して、内包原子の運動と比熱で観測される時間依存性の原因を追求した。今後、高精度測定された種々の物質の構造と物質の電子物性を総合的に解釈することを計画している。
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